オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
聡ちゃんの家まで、走って10分。
上京して来てから、ずっと住んでる聡ちゃんのアパートを目指す。
ウチの母親は、もっと大学に近い場所にしたらよかったのに、としょっちゅう言ってたけど、俺は全然逆で。
俺の足で、遊びに来れる距離が、すごく嬉しかった。
勝手にセカンドハウス状態で、休みになると泊まり込んでも、聡ちゃんは何も言わないで。
「……そうだよ、あいつ何も言わなかったじゃん」
あんな、急にキスするとかじゃなく。
じゃあ、いつも泊まりに行ってた、遊びに行ってた俺を、聡ちゃんはどう見てたんだよ?
考えたら、走る足が止まる。
バイト帰りで、スタジャン羽織ったまま飛び出したけど、急に寒さを感じて、俺は通りにあったコンビニに飛び込んだ。
今更なのに、聡ちゃんに会うのが怖い。
無駄な足掻きと思いながら、俺はコンビニでしばらく時間を潰した。
* * *
とりあえず、手ぶらじゃなんだしと自分に言い訳して、晩飯俺まだ食べてなかったからおでんを買って。
聡ちゃんが好きな、卵とちくわとはんぺんも、二人分買って。
余計に、走れない。
歩きながら漏れる呼吸は、薄明かりの中白く消える。
昔は、この白い息ですら面白くて、よく聡ちゃんに見せたもんだ。
聡ちゃんが住んでいたのは、秋田で。
とってもとっても、雪が深くて寒い。
小さいころから、ばあちゃんの家に遊びに行くのが楽しみでしょうがなかった。
「……?」
アパート手前の、煙草自販機の横に人影が見えて、俺は一瞬身構えた。
そこは親切に灰皿が置いてある自販機なんで、よく喫煙してる人を見かける。
俺が吐く息とは違う、白っぽい煙りが、ゆらゆら立ち上る。
背中を向けてるその姿に、俺は息を飲んだ。
「聡ちゃん!」
「……寄り道してたのは、想定外だったな。すぐに来るかと思ってたんだが」
部屋着のスェット姿で、素足にサンダルを履いた聡ちゃんが俺に振り返った。
「な、なんで俺来るって!」
「おばさんから、電話が来た。けど、来ないから心配したぞ。今探しに行くかと思っていたところだ」
「聡ちゃん……」
いつもの聡ちゃんに、俺はなんでか、泣きたくなった。
たった2日顔見なかっただけなのに、すごく会ってない気がして。
「話は、家で聞く。……さすがの北国生まれでも、寒いんだ」
「あ……」
煙草を灰皿に押し付け、聡ちゃんの口から漏れた息は、俺と同じ白い息だった。
背中に手を回されて、いつものように促される。
――何か決心着かないまま、俺は聡ちゃんと一緒に部屋に向かった。
………………………
聡ちゃん再登場。
この先どうするか、というか聡一という男が気になってきて楽しくなっています!
好きな系統は、
【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。