オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
「えっと、もしかしなくても、これは計算が合って無いですか」
「もしかしないどころじゃなく、それしかないんだけど」
放課後の教室の隅で、俺は馬鹿な同級生と小一時間向き合っていた。
眼鏡を押し上げて、相手が広げている数学のノートを叩く。
小学校で、何を習ってきたらこういう人間が出来るんだろ。
中学に入って、同級生として知り合ったこの香野知佳という奴は、どうしようもなく頭が悪い。
背は身長以下だし、顔も並み以下だし、これで頭まで悪いってコイツ、救いようないじゃん。
小馬鹿にする俺の視線にも気付かず、大して親切ともいえないアドバイスで、四苦八苦して解いた問題を俺に見せる。
「はい、正解」
「やったー!」
喜ぶと、顔がくしゃくしゃになる。……ブサイク、と口には出さないで呟きながら、俺も小さく笑う。
トモヨシなんて、それなりな名前貰ってるくせに全然名前負けだ。
馬鹿面を眺めていたら、だらしなく緩んだ顔のまま、香野は俺の手をぎゅっと握って来た。
「ありがとうですっ、金谷君! 俺ね、金谷君とお友達になれて、すごい良かったです!」
「勉強見てるだけだし、別に友達じゃないでしょ俺達」
「え……そ、そうなんですか?」
数学担当の担任が、一人ずば抜けて学力が低いコイツを、ずば抜けて賢い俺に押し付けただけ。
俺も、そういう馬鹿をちゃんと面倒見れる人として、印象付けたくて付き合ってやってるだけ。
それを友達って、オメデタすぎるよコイツ。
「そっか……金谷君とは、お友達じゃないですか」
落胆してる香野に、俺は少しだけ罪悪感を感じた。
そんな自分に気づいて、驚く。
――何、コレ。
こんな馬鹿、俺の人生の何の役に立つわけ?
いや、違う。作戦失敗したからだ。
もう少し上手い事、コイツを利用しなきゃならないのに。
この馬鹿さえいれば、俺は大したことしなくても、『面倒見のいい』『頼れる』生徒を演じてられる。
……だから、慰めなきゃ。
「ごめん、香野君。ちょっと、言いすぎたよね」
「え……」
「友達ってさ、まだ俺達そんなに仲いいわけじゃないでしょ?俺と香野君と、友達の基準が違うから……ね」
「えと、よくわかんないけど、でも友達にはなれるんですよね!? ならいいです!」
期待に満ちた瞳は、ちょっと子犬みたいで、一瞬可愛いと思ってしまった。
……いやいやいや、無理。有り得ない。
こんなの、身内でもごめんだし。
大体俺、面倒臭い相手とか、大嫌いだし。
「これから、もーっともっと、いっぱい金谷君と仲良くなるです! ね!」
ね、って。
呆れた俺に構わず、握った手をぶんぶん振る香野に、溜息をついた。
なんか、適当にお友達ゴッコでそれっぽく乗り切る策はないものか。
そう考えていた俺は、ある事に閃いた。
「じゃあさ、友達になるから……今度から香野君を『チカ』って読んでもいい?」
「チカ? なんでですか?」
「知佳って、チカって読めるじゃん」
「おー!!!! すごいっ、金谷君スゴイです!!」
喜んだ顔が、本気で嬉しそうで。
俺も釣られて、普通に笑いが漏れていた。
何、この単純馬鹿。――もう、ヤバい本当に、可愛いんだけど。
「じゃ、チカと友達になってあげる」
「わー! わー! よろいしくです! うれしいです!!」
ああ、この顔がいつも見られるなら、友達になるのも悪くないか。
そんな事を思いながら、新しく手に入れた玩具を、俺は面白そうに眺めた。
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金谷と香野、中学時代。
まだ、金谷自覚する前のお話でした。
適当に、色々と遊ぶだけ遊んでサヨナラする予定が狂ったなと気付くのは、高校受験の頃なんじゃないですかね、忍様。
一途な分、可哀想だと思うんですが…ごめんね忍様。
【2009/10/20~11/21 拍手掲載】
好きな系統は、
【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。