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オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。

2024年11月15日 (Fri)
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2009年11月20日 (Fri)

【問題】

 「きっかけ」で何かお願いします!

拍手[3回]



 いつも、一人の部屋で膝を抱え聞いていた音が、流れ出す。
 現実味が薄い中、番組は俺という異物に構わず、いつものように、始まったのだった。


  * * *


「今夜はリスナーのみんなもお待ちかねの、アイツが来てるぞ~。フライングで先に触りまくった俺を、恨むなよ?」

  マイクに向かい、挑発する横顔を眺め、俺の心臓は煩く音を立て始めた。

「さ、今夜のゲスト! シマネコだ!」

 山本……いや、YAMATOさんが、俺を手招く。
 ちらりと横目で見たブースで、浜口さんがゴーサインを出すのが、見えた。

「は……初めまして、シマネコ、です」
「緊張してて可愛いだろ? 顔から耳まで、真っ赤なんだぞコイツ」
「そっ、そんな事ない! ……です」

 からかう台詞に睨みつければ、YAMATOさんが眼を細めて笑う。

「マジ可愛い、可愛い過ぎて顔絶対晒せねーや。顔の見えないラジオでよかった。な?」
「……はい」
「そんな可愛いシマネコが、俺の番組に、投稿してくれたきっかけ、教えてくれないか?」

 打ち合わせでは、浜口さんもいた手前、「ふさぎ込んでいた時期、励まされているような気がしたから」……と答えたけれど。
 本当の事を、彼に伝えてもいいのだろうか。
 ほんの数秒、黙り込んだ俺に、YAMATOさんは片眉を上げて俺の顔を覗き込んで来た。

「シマネコ~? ラジオで無口は、放送事故になるぞ?」
「ごめんなさい! あ、あの……きっかけ、は……」

 困り顔で見つめたYAMATOさんが、安心させるように、俺の手をテーブルの下で握り込んだ。
 ――伝えよう、全部。
 そのために、俺は外に出たんだ。

「俺……ずっともう、何年も、引きこもりで。こんな俺、生きてても、どうしようもないって思って。そんな時、偶然聞いたラジオから流れて来た声が……昔、高校生だった頃……好きだった人の声に似てて」

 重ねられた手を握り返し、俺は口の中が渇くのも構わず言葉を続けた。

「偶然、好きだった曲も流れて来て……俺、またこの人の声が聞きたいと思って。翌週からちゃんと番組、聞き始めました。それから、番組の中で俺の名前、呼んでほしくて、何かないかと思って……短い話を送るように……」

 怖いぐらい、真剣な眼が俺を見ていて。
 言葉が自然、尻窄みななる。

「それって俺が、生きるきっかけ?」
「――そう、です。いつか、貴方にお礼を伝えるため生きようって。貴方に会うために、外に今夜……何年かぶりに出ました」


……………………………

 


 

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