オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
いつも、一人の部屋で膝を抱え聞いていた音が、流れ出す。
現実味が薄い中、番組は俺という異物に構わず、いつものように、始まったのだった。
* * *
「今夜はリスナーのみんなもお待ちかねの、アイツが来てるぞ~。フライングで先に触りまくった俺を、恨むなよ?」
マイクに向かい、挑発する横顔を眺め、俺の心臓は煩く音を立て始めた。
「さ、今夜のゲスト! シマネコだ!」
山本……いや、YAMATOさんが、俺を手招く。
ちらりと横目で見たブースで、浜口さんがゴーサインを出すのが、見えた。
「は……初めまして、シマネコ、です」
「緊張してて可愛いだろ? 顔から耳まで、真っ赤なんだぞコイツ」
「そっ、そんな事ない! ……です」
からかう台詞に睨みつければ、YAMATOさんが眼を細めて笑う。
「マジ可愛い、可愛い過ぎて顔絶対晒せねーや。顔の見えないラジオでよかった。な?」
「……はい」
「そんな可愛いシマネコが、俺の番組に、投稿してくれたきっかけ、教えてくれないか?」
打ち合わせでは、浜口さんもいた手前、「ふさぎ込んでいた時期、励まされているような気がしたから」……と答えたけれど。
本当の事を、彼に伝えてもいいのだろうか。
ほんの数秒、黙り込んだ俺に、YAMATOさんは片眉を上げて俺の顔を覗き込んで来た。
「シマネコ~? ラジオで無口は、放送事故になるぞ?」
「ごめんなさい! あ、あの……きっかけ、は……」
困り顔で見つめたYAMATOさんが、安心させるように、俺の手をテーブルの下で握り込んだ。
――伝えよう、全部。
そのために、俺は外に出たんだ。
「俺……ずっともう、何年も、引きこもりで。こんな俺、生きてても、どうしようもないって思って。そんな時、偶然聞いたラジオから流れて来た声が……昔、高校生だった頃……好きだった人の声に似てて」
重ねられた手を握り返し、俺は口の中が渇くのも構わず言葉を続けた。
「偶然、好きだった曲も流れて来て……俺、またこの人の声が聞きたいと思って。翌週からちゃんと番組、聞き始めました。それから、番組の中で俺の名前、呼んでほしくて、何かないかと思って……短い話を送るように……」
怖いぐらい、真剣な眼が俺を見ていて。
言葉が自然、尻窄みななる。
「それって俺が、生きるきっかけ?」
「――そう、です。いつか、貴方にお礼を伝えるため生きようって。貴方に会うために、外に今夜……何年かぶりに出ました」
……………………………
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【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。