オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
人生で一番長い、30分だった。
長くて、濃密な30分。
同級生だった頃だって、こんなに山本っ一緒に過ごした事も話した事もない。
番組の締めに入ったYAMATOさん…山本の横顔を見つめながら、俺は妙な感覚を思い出していた。
高校の頃、降車駅が近付く時にいつも感じたそれ。
もう少し、という我が儘な感情。
「さ、シマネコ。おまえからも最後にメッセージだ」
突然手首を引かれ、つんのめながら俺はマイクの前に近づいた。
穏やかな眼差しが、俺を促す。
「あ、あの……たくさん、メールありがとう、ございました。俺なんかが、生きてても、世の中の役に立たないって……ずっと思ってて。今も、別に、役には立ってないとは思うんだけど……」
「だけど?」
「俺が、少しでも支えられる側に、なれたらいいと今日……思えるようになりました。俺みたいのでも、生きてるから。ありがとうございます、皆さんにちゃんと……お返し出来たらいいなと、思います」
つっかえながらも話し切った俺に頷き、YAMATOさんはふっと悪戯を思い付いたような顔になった。
「だったら、来週も来るか? 番組」
「え?」
仕切りの向こうで、大袈裟に頭を抱えた浜口さんを、YAMATOさんは笑い飛ばす。
「なぁ、リスナーだって聞きたいだろ? もっとシマネコの声。既成事実作って、今ここで来週も出演決定って事で。……おまえらラジオの向こうの声で、また上動かせよ」
「え、で、でも!」
「おまえだって、用事作らないと外出ないだろ。よし、決定」
「ええ!」
一方的に決まった話に、うろたえる俺を余所に、YAMATOさんはマイクに言い切った。
――来週も? 来るのか? 俺が。
「それで、だ。外に出たくても出る勇気がまだないキミ、そんな気持ちをメール寄越しなさい。シマネコ先生が、返事をくれるから」
「え?」
「おまえには、宿題。メール転送するから、応えてやれよ。役に立つぜ?」
軽い口調とは裏腹に、真面目な顔の彼を見つめ、俺は息を呑んだ。
彼が、俺を支えてくれたように……俺も。
誰かの支えになれるんだろうか。
「というわけで、プロデューサが卒倒しかかってる今夜の『サタデーヤングナイト』はここまで。お相手は、YAMATOでした。グッナーイ」
そうして、長い長い30分は……終わった。
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萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。