オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
あの人が、「外に出る」と言い出した時、瞬間的に感じたのは……失望だった。
妙な、喪失感。
別に、引っ越すわけでも、この世から消えるわけでもないのに。
ただ、俺には閉じ込めてはおけないんだと、まざまざと自覚したんだ。
……あの時。
* * *
「主任、配達ルートの変更して欲しいんですけど」
「あ? お前、今のルート絶対変えるなって言ってただろうが」
「必要無くなったんで」
端的に答えた俺に、上司はあからさまに不審な顔を見せた。
確かに、言ったよ。
あの人の部屋に、荷物を週に何回も届けるようになって。
交わす言葉が、単語じゃなく会話になった頃、上司に直談判した。
俺以外が、あの人の目に入らなければいいと思って。
「……私情なら、勘弁しろよ」
「私情っちゃ、私情ですけど。さすがにフラれたのに、平気な顔して訪ねる厚顔ぶりが俺、ないんで」
「お前なぁ……」
三十代半ばのはずの上司は、歳より遥かにオッサン臭い溜息を吐いた。
「客に手、出してねぇだろうな? やめろよ警察沙汰は」
「まさか。玄関より先は、未開の地ですよ」
「玄関だけだって、十分ヤルこたヤレんだろ」
「しませんよ。……本当にあの人には俺、手を出そうなんて考えなかった」
会えるだけで満足、なんて純情ぶったわけじゃなく。
踏み込んだら、いけない気がしたんだ。
あの人が初めて、俺以外の配達員が行った後、ぽつりと呟いた言葉がまだ耳に残ってる。
『……なんか、君以外の人は怖いね』
ああ、俺の物なんだと。
あの時、確かに感じた独占欲。
ずっと俺の心の中に隠した気持ち同様、あの人を閉じ込めておきたかったのに。
勝手にあの人は、外に飛び出す。
「考えとく。たく、面倒言いやがって」
「お願いします」
「あ、ちょうどいいお前。フラれたなら、前言っただろ。ウチの妹と付き合え」
「……嫌ですよ、主任と兄弟になるの。転職しますよ、そしたら」
「この野郎」
軽口を叩き合って、部屋を出る。
転職も、本気で考えた方が良いかもしれない。
下手に顔を見たら、諦めがつかない。
「ああ……そうだ」
餞別代わりに、何処に行くか知らないけど、次に行く時は路線図でも持っていくか。
そこに着くまでは、俺のモノ。
……ひそかな、自己満足の独占欲だ。
…………………………………………
配達員(名無し)にも、幸せを!とコメント頂いたんですが(笑)
折角の出会いのチャンス(主任の妹)を、棒に振るくらいなんで、まだまだちょっととおいかな、と。
本番編前、辺りのお話です。鳥籠云々~と言っていた頃の。
こういう、口に出さない片想いモノが、大好きですみません。くっつかなくても、美味しく頂けます!
▽ランキング参加してます★お気に召したらポチリお願いします。
にほんブログ村
好きな系統は、
【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。