オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
新聞屋に貰ったタダ券で、高梨と映画に来た。
こういう安上がりなデートが、昔は大嫌いだった。
俺を誰だと思ってんだと、散々相手を罵倒した揚句、その場でばっさり切って別れた事もある。
……その俺が、ほだされたモンだ。
なんなんだ、高梨は。
「眉間に皺、癖になると大変だよ。克巳さん」
飲み物と、ポップコーンを持って来た高梨が、隣に座るなり眉間に指を突き立ててきやがった。
ムカつく。こいつの、こういう態度。
今までの、男とは全然違う。
顔だって、俺より老け顔だわ、性格もどっかジジ臭ぇし。
年下らしい可愛いさが、全然ねぇ。
「……美形はどんな顔しても、キマんだよ」
「んーでも、俺が嫌かな」
苦笑を漏らす顔から、俺は目を背けた。
「……そういや、例の女子生徒どうした?」
「ああ、拒食症の子ですか。養護教諭と相談して、西口の犀川病院に」
「犀川?」
久しぶりに聞いた名前に、思わず身を起こせば、高梨が怪訝な顔を見せた。
「え……評判いいって聞いたんですけど、ヤバかったですか?」
「……ちげーよ。ちょっと知り合いなだけだ、あそこの二代目と」
「ああ、若先生ですね。感じいい人ですよね」
納得した高梨に、それが昔の男だと俺は言えなかった。
……高3の時の、最初の男。
当時まだ医大生だった、俺の家庭教師。
「あいつなら……問題ねぇな」
「よかった、克巳さんからもお墨付き貰えて」
安堵する高梨に、俺はあいつが言っていた言葉を思い出した。
『君には、いずれ君の抱えた痛みを全部受け止める人が出来るから。僕はその、最初の一歩の手伝い』
あいつは初めて、俺を俺の全てを肯定と否定してくれた。
親元から離れ、俺を県外の歯科大に進む事を勧め、親を説得してくれた。
『君が君らしく、生きられる相手を。それが見つかった時に、僕の最初の患者の治療は完了するよ』
まだ、そんな奴には会えてねぇ。
別に、あいつの言う事を真に受けてるワケじゃねぇが。
「克巳さん?また、皺」
「皺言うんじゃねぇよ」
「どうせなら、笑い皺が出来てほしいんですけどね」
人好きする笑顔、てやつを浮かべる高梨の目尻には、うっすら線が浮かんでいた。
自分の目尻を、指で摩る。
「……やれるもんなら、やってみろ」
「そう?じゃ、頑張ってみようかなぁ」
笑う高梨から目を逸らし、俺はスクリーンに向き合った。
……医者と草津の湯じゃ治せねぇらしい病気ってのは、昔から決まってる。
もしもこれが、お前とがそうならば。
俺は、今度こそこの痛みが、取れるんだろうか。
…………………………………………………
克巳さんの暗部、に焦点を当てた話前後編的な。
実は11/20現在行き詰っているのは、そんな克巳さんの救済をどうするかだったりで…。
この二人に関しては、温かい目で見守ってほしいと思います(そんなキャラばっか)
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【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。