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オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。

2024年11月15日 (Fri)
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2009年11月20日 (Fri)
俺からもキミへ、伝えたい事。

【問題】
 
 「きっかけ」で何かお願いします!

拍手[2回]




 気がつけば、YAMATOさんの手が、俺の頬に触れていた。
 渇いた指先と、濡れた感触。

「……やっべ、俺今、絶句してた? 感動してたって事にして、事故にすんなよ? ディレクター」

 溜息混じりに呟き、ブースに向かい何か合図を送り、YAMATOさんはマイクを前に肩を竦めた。

「て、ワケでCM。さぁみんなも、今のうちに涙拭くハンカチなりティッシュ、準備しとけよ? 俺も鼻かんでくるわー」

 CMに入った事を知らせる合図に、俺は張り詰めていた息を吐き出した。
 涙混じりの熱い吐息に、一気に恥ずかしさが込み上げてくる。
 ――俺は今、何を彼に伝えたんだ?

「あ、あの……!」
「熱烈告白過ぎだろ、お前。俺をどれだけ煽る気だよ」
「あ、あの、だから、その……」
「お前に、死なれないでよかった。本気でだ。俺が、そのきっかけを作れたのなら、結果オーライだ」

 俺が伝えた告白を、彼はそう言って締めた。
 軽い、失望感が俺を襲う。
 当然だ、俺は何を期待していたんだろう。
 高校を卒業して、約10年ぶりの再会。きっかけが、ラジオ番組。
 そこに、……俺の気持ちなんて必要ない。
 わかっていたのに。

『CM明けるぞ』
「了解」

 浜口さんに応え、山本がまたYAMATOさんの顔に変わった。
 ジングルの後、一呼吸つき、彼はマイクに向き直った。

「いやー、感激し過ぎてシマネコ今号泣中だから、しばらく俺の思い出話でいいか?」

 浜口さんが、ブースの中で何か叫ぶのを遮るようにマイクに語り始める。

「長いリスナーには耳タコだろうが、俺にはずーっと忘れられない、もう一度会いたい奴がいるの。高校時代の、片想いの相手。毎朝、電車で15分。その間だけ話した奴」

 ……え?と振り向くが、彼はマイクから目を逸らさず話しを続けた。

「最初に話し掛けたきっかけは、忘れらんねぇ。当時最新モデルの、CDウォークマン持ってた奴に、『いいの持ってるな』って」

 そうだ。入学して、2週間目。
 いきなり朝、彼は話しかけて来た。

「何聞いてるか、何の本読んでるか。あいつの横顔見ながら、話し掛けた。振り向かないあいつの横顔、毎日見てて。ある週末、同じ電車の同じ場所に乗って、隣にあいつがいない違和感に、俺は唐突に気付いた。――ああ、俺、あいつが好きなんだ、って。男相手に、初めて思った瞬間だった」

 一瞬、スタジオを無音が包んだ。
 そんな気がした。


 ……………………………………

 

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