オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
気がつけば、YAMATOさんの手が、俺の頬に触れていた。
渇いた指先と、濡れた感触。
「……やっべ、俺今、絶句してた? 感動してたって事にして、事故にすんなよ? ディレクター」
溜息混じりに呟き、ブースに向かい何か合図を送り、YAMATOさんはマイクを前に肩を竦めた。
「て、ワケでCM。さぁみんなも、今のうちに涙拭くハンカチなりティッシュ、準備しとけよ? 俺も鼻かんでくるわー」
CMに入った事を知らせる合図に、俺は張り詰めていた息を吐き出した。
涙混じりの熱い吐息に、一気に恥ずかしさが込み上げてくる。
――俺は今、何を彼に伝えたんだ?
「あ、あの……!」
「熱烈告白過ぎだろ、お前。俺をどれだけ煽る気だよ」
「あ、あの、だから、その……」
「お前に、死なれないでよかった。本気でだ。俺が、そのきっかけを作れたのなら、結果オーライだ」
俺が伝えた告白を、彼はそう言って締めた。
軽い、失望感が俺を襲う。
当然だ、俺は何を期待していたんだろう。
高校を卒業して、約10年ぶりの再会。きっかけが、ラジオ番組。
そこに、……俺の気持ちなんて必要ない。
わかっていたのに。
『CM明けるぞ』
「了解」
浜口さんに応え、山本がまたYAMATOさんの顔に変わった。
ジングルの後、一呼吸つき、彼はマイクに向き直った。
「いやー、感激し過ぎてシマネコ今号泣中だから、しばらく俺の思い出話でいいか?」
浜口さんが、ブースの中で何か叫ぶのを遮るようにマイクに語り始める。
「長いリスナーには耳タコだろうが、俺にはずーっと忘れられない、もう一度会いたい奴がいるの。高校時代の、片想いの相手。毎朝、電車で15分。その間だけ話した奴」
……え?と振り向くが、彼はマイクから目を逸らさず話しを続けた。
「最初に話し掛けたきっかけは、忘れらんねぇ。当時最新モデルの、CDウォークマン持ってた奴に、『いいの持ってるな』って」
そうだ。入学して、2週間目。
いきなり朝、彼は話しかけて来た。
「何聞いてるか、何の本読んでるか。あいつの横顔見ながら、話し掛けた。振り向かないあいつの横顔、毎日見てて。ある週末、同じ電車の同じ場所に乗って、隣にあいつがいない違和感に、俺は唐突に気付いた。――ああ、俺、あいつが好きなんだ、って。男相手に、初めて思った瞬間だった」
一瞬、スタジオを無音が包んだ。
そんな気がした。
……………………………………
にほんブログ村 ⇒次へ:前へ
好きな系統は、
【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。