オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
静まり返った中、淡々とした彼の声だけが、俺の耳に入って来る。
「自覚してからも、毎朝話すだけの日々で。卒業まで、結局……なんのアクションも俺は、起こせなかった」
そうだ。俺達は、ずっと、朝の短い会話だけを卒業まで繰り返した。
俺も、何も伝えず。
彼も、何も伝えずに。
「高校卒業したら消息不明でさ、そいつ。特別親しい友人も、いなくてな。しばらくして偶然、有線放送であいつが好きだって言った曲聞いて……ああ、もしかしたらラジオならあいつに、繋がるかなと。超不純な動機で、ラジオDJ目指した。同じ空の下にいるなら、絶対あいつにいつか伝わるはずだってな」
一つ深呼吸をし、YAMATOさんは俺にちらりと目を向けて来た。
少し、照れたようなばつの悪い顔を見せたまま、話を続ける。
「その位俺、ずっと彼が好きでした。でしたって言うか、現在進行形で、今……隣にいる奴が、好きです」
「お……俺?おれで、いいの?」
黙って聞いているのが、もどかしくて。
俺はつい、口を挟んでいた。
「ああ、お前だよ、シマネコ。……お前がずっと、好きだった。俺も、ずっと会いたかった」
正面から見つめる瞳は、懐かしいあの顔で。
俺はまた泣きそうになって、慌てて下唇を噛み締めた。
「どこかでお前が、必ず聞いてるって確信、持てたのもお前の投稿のお陰だ。こんな奇跡的瞬間に立ち会えたリスナーは、光栄に思えよ?」
奇跡。本当だ。
「さてCMの後、祝福メッセージから、質問メールまで、読み上げるぞ! どしどし送れ!」
浜口さんが慌てた様子で、CM!と叫ぶと中に駆け込んで来た。
「お前っ! 何、盛大にカミングアウトしてくれてんだ! ……しかも素人巻き込んで!」
「どーせ番組間もなく終了すんだし、伝説残せていいだろが。電波私用番組だって、陰口叩いてた奴らに最後まで私用貫いてやれ」
「あのな!」
そうだ、感激してる場合じゃない。
今俺達がいるここは、二人だけの空間じゃなく、全国放送の――ラジオ番組だ。
「あ、あの……俺……」
「ああ、シマネコ君が悪いとかじゃなくてだな。たく、この馬鹿が!」
「浜口さん!」
まだ言い募ろうとした浜口さんを遮るように、別のスタッフが飛び込んで来た。
「さっそく上から苦情か?」
やれやれとスタッフが持って来た紙の束に、浜口さんの目が丸く見開かれたのが見えた。
………………………
にほんブログ村 ⇒次へ:前へ
好きな系統は、
【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。