オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
もし、願いが叶うならば、もう一度会いたいと思う人が三人いた。
他界した両親と、……高校の頃ひそかに心の支えにしていた彼。
高齢の親という家庭環境から、同年代の同級生と隔たりを感じていた俺に、話しかけてくれた彼と。
その頃の面影が微かに残る、精悍な顔の男性が今、俺の前に立っていた。
茫然と、目を見開いて。
「シマネコ……て、お前……西村? 西村慶太郎か!」
「山本……冬耶? ヤマトさんが?」
息が出来ないとは、こういうことなのか。
緊張と歓喜と興奮とで、酸欠になり、頭がクラクラして来た。
せっかく会えたYAMATOさんの顔が、霞んでくる。
「おい!」
傾いだ身体を、彼が支えてくれたと思った瞬間、目の前が真っ白になった。
* * *
「よ」
眼を開けた瞬間飛び込んで来た顔に、俺は短い悲鳴を上げた。
「酷ぇ、ぶっ倒れたお前、介抱してたのに」
「え……」
頭の下に当たる固い感触、覗き込む顔の位置。
俺は控室のソファーで、山本…いやYAMATOさんにひざ枕されていた。
「な、何して……!」
「お前って、寝顔も綺麗だな」
顔にかかっていた髪を梳かれ、俺は思わず心地よさに眼を細める。
が、先程の言葉を思い出し、慌てて身を起こした。
「き、綺麗とか、嘘つけ! 引きこもりの、根暗な、むさい男に!」
「お前は昔から、綺麗だったよ。通学電車で、一人ヘッドフォンで音楽聞きながら、文庫読んでた顔も、綺麗だった」
懐かしむように、柔らかな表情を見せる彼に、俺は目を瞬いた。
俺達は、学校に向かう通学電車の15分だけの、友達だった。
短い時間で、彼からの質問に答える……それだけの。
ただ彼は、俺が答えた文庫や、聞いていた音楽を、必ず自分も試してくれた。
「……今夜は、俺に会いに何年かぶりに外、出たんだよな」
小さく頷けば、不意に肩を掴まれ、勢いよく抱き竦められた。
「やま……!」
「よくやった」
メールで、俺がどんな生活をしていたかを、彼は知っている。
その彼が、俺を労ってくれた。
ここまで来た、俺を。
一番会いたかった人が。
「……泣くなよ」
「うっ……く、うん……!」
「おいおい、本番はまだこれからなんだからな」
彼の声も、肩も、掌も。
そのすべてが暖かくて、鳴咽はなかなか止まらなかった。
…………………………
本番~最終回まで、一気に投下致します。
長らくお待たせして、申し訳ありませんでした(>_<)
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好きな系統は、
【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。