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オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。

2024年11月15日 (Fri)
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2010年02月17日 (Wed)


 ⇒続きです

拍手[1回]


 
 ……なんだこれ。
 お通夜かよ。
 無理矢理持たされたグラスワインを、高梨は無言で煽ってる。
 犀川は、不気味な笑顔。
 俺は、胃が痛い。
 畜生、ワインが染みる。悪酔いするだろ、くそ。

「いい飲みっぷりだね」
「……奢りだそうですから」

 車だからと、頑なに断り続けていた高梨だったが、代行と飲み代を持つと犀川が強引に押し切った。
 一人場違いな、スエット姿の高梨と、スーツ姿の俺達という奇妙な男三人の組み合わせは、人目引きまくりだ。

「三人とも、先生だよね。高梨君は、教師だけど」
「……ええ。歯科医と精神科医は、どういった共通項があるんですか?」
「歯科医と教師だって。君、克巳君の患者じゃないんだろ?」

 犀川の楽しそうな顔が、ムカつく。
 その癖、高梨を見る目は品定めするみたいに、やけに真剣だ。
 そういえば、犀川に付き合ってる相手を見せたのは初めてだ。
 こいつが、こんなに興味示すのも。

「僕はね、克巳君の先生だよ。いろいろな勉強のね。克巳君が床上手なのも、僕の指導のおかげだよ」

 椅子を派手に鳴らし、高梨は止める間もなく立ち上がった。
 客がざわめき、店員が飛んで来る。

「ああ、帰るから会計と代行お願いします」

 飛び掛かる勢いの高梨を片手で制して、犀川は平静な声で店員にそう告げた。

 

 * * *


「じゃあね、高梨君に克巳君」

 さっさとタクシー乗り場に向かう犀川を、高梨は見ない。
 俺は犀川を追い掛け、その膝裏を蹴り付けた。

「何余計な事べらべら喋ってんだよ、あんた!」
「余計? そうかな。克巳君の過去は、あのアルバムだけじゃないっていう、事実だよ」
「勝手に……!」
「火種が多くないと、火は着かないからね。結果はきちんと報告してね、宿題だよ」

 コートを翻した犀川を飲み込むと、タクシーは静かにドアが閉まった。
 走り出した車に、舌打ちを零す。
 火種どころの話じゃねぇだろ、あのクソ医者。
 宿題だ?
 ふざけんな!

「克巳さん」

 植え込みの縁に腰掛けていた高梨が立ち上がり、俺を呼んだ。
 久しぶりの二人きりが、息苦しい。
 原因は、犀川だと思いたいが、それだけじゃないんだろう。

「……来ましたよ、代行。送ります」
「いい」
「え?」
「俺の家じゃなくていい、おまえの家に帰る」

 犀川の策に乗るのはシャクだが、使えるモノは使ってやる。


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