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オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。

2024年11月15日 (Fri)
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2010年02月11日 (Thu)

 正月風景in北森家 

【問題】
驚いた…
攻めが泣くなんて…
いつも僕(受け)が泣かされているのに。

そっと、近寄り
受けは攻めの手を握る。
攻めは泣いてばかりで
こちらを見ようとしない。



拍手[1回]



 こんな泣き方があるのかと、祐司は隣で静かに涙を流す賢を見つめ思った。
 視線の先は、テレビ画面に釘づけ。
 その画面には、幼子が一人で初買い物に行く恒例の番組が流れていた。

「……ティッシュ、持ってくるか?」
「~~っ!!!!」

 どうやら当人は、泣いていた事に気付いてなかったらしい。
 静かに零していた涙を、部屋着の袖で乱暴に拭うと、ごまかすように咳ばらいを一つした。
 真っ赤な目が、罰悪そうに伏せられる。

「……夏紀と、買い物に行かされたのを、思い出していたんだ」
「なっちゃんと?」

 永遠に歳を取らなくなってしまった、親友。
 折りに触れ話題にはしていたが、祐司にはわからない時間の積み重ねが、二人にはあった。
 賢は飲みかけのグラスに口をつけ、小さな声で呟く。

「あいつは、俺の何倍も言葉が早く人懐こかった」
「へぇ……」
「だが、一度だけ二人で通い慣れたスーパーに買い物に行った時……財布を落としたんだ。夏紀が」

 賢は思い出し笑いをすると、グラスを置いて頬杖をついた。

「いつも俺を泣き虫だと言っていた奴が、大人が束になっても泣き止まなくてな。逆に俺は、泣けなかった」

 ――小さい掌が、痛いくらいに自分の手を握っていた感触をまだ覚えている。
 左の掌を見つめ、賢は懐かしむように言葉を続けた。

「俺のポケットに、たまたま姉貴に貰った百円玉が入っていて。俺は夏紀に、始めて奢った。……チロルチョコを」
「そんで、なっちゃん泣き止んだのか?」
「ああ。ピタリとな。俺ごときに施しを受けたのが、相当ショックだったらしい」

 苦笑した賢の目尻が、再び潤み出す。
 祐司は敢えてそのことには触れず、一緒に笑みを浮かべた。

「なっちゃんらしいな」
「だろう?あいつはいつでも、俺の先に立ちたがった。…いつも、なんでも…っ」

 声を詰まらせた賢の肩を、祐司は無言で抱き寄せた。
 目許を掌で覆う賢を、ただ黙って抱きしめる。
 彼が、この場にいない原因の一端は…自分だ。
 賢は違うと、何度も言ってくれたが、祐司の心の奥底では、まだそれは完全に晴れてはいない。
 こんな風に泣く賢を、慰める言葉が出て来ない。

「……祐司」
「ん?」
「おまえも慌て者で、おっちょこちょいだからな。――先に行くなよ」
「うん」

 せめて、この約束だけは果たせるように。
 祐司は力を込め、賢を強く抱きしめた。


………………………………………………

 正月有名な、某番組をみていてちょっと思いついた話でした。
 個人的に、あれは非常に泣けるんですが。子供がいなくても。
 賢んと、なっちゃんは、幼馴染でいろいろ共有の思い出があったんだろうなとか。
 そういう、ちょっと祐司も入れない絆も大事だと思います。



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