オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
こんな泣き方があるのかと、祐司は隣で静かに涙を流す賢を見つめ思った。
視線の先は、テレビ画面に釘づけ。
その画面には、幼子が一人で初買い物に行く恒例の番組が流れていた。
「……ティッシュ、持ってくるか?」
「~~っ!!!!」
どうやら当人は、泣いていた事に気付いてなかったらしい。
静かに零していた涙を、部屋着の袖で乱暴に拭うと、ごまかすように咳ばらいを一つした。
真っ赤な目が、罰悪そうに伏せられる。
「……夏紀と、買い物に行かされたのを、思い出していたんだ」
「なっちゃんと?」
永遠に歳を取らなくなってしまった、親友。
折りに触れ話題にはしていたが、祐司にはわからない時間の積み重ねが、二人にはあった。
賢は飲みかけのグラスに口をつけ、小さな声で呟く。
「あいつは、俺の何倍も言葉が早く人懐こかった」
「へぇ……」
「だが、一度だけ二人で通い慣れたスーパーに買い物に行った時……財布を落としたんだ。夏紀が」
賢は思い出し笑いをすると、グラスを置いて頬杖をついた。
「いつも俺を泣き虫だと言っていた奴が、大人が束になっても泣き止まなくてな。逆に俺は、泣けなかった」
――小さい掌が、痛いくらいに自分の手を握っていた感触をまだ覚えている。
左の掌を見つめ、賢は懐かしむように言葉を続けた。
「俺のポケットに、たまたま姉貴に貰った百円玉が入っていて。俺は夏紀に、始めて奢った。……チロルチョコを」
「そんで、なっちゃん泣き止んだのか?」
「ああ。ピタリとな。俺ごときに施しを受けたのが、相当ショックだったらしい」
苦笑した賢の目尻が、再び潤み出す。
祐司は敢えてそのことには触れず、一緒に笑みを浮かべた。
「なっちゃんらしいな」
「だろう?あいつはいつでも、俺の先に立ちたがった。…いつも、なんでも…っ」
声を詰まらせた賢の肩を、祐司は無言で抱き寄せた。
目許を掌で覆う賢を、ただ黙って抱きしめる。
彼が、この場にいない原因の一端は…自分だ。
賢は違うと、何度も言ってくれたが、祐司の心の奥底では、まだそれは完全に晴れてはいない。
こんな風に泣く賢を、慰める言葉が出て来ない。
「……祐司」
「ん?」
「おまえも慌て者で、おっちょこちょいだからな。――先に行くなよ」
「うん」
せめて、この約束だけは果たせるように。
祐司は力を込め、賢を強く抱きしめた。
………………………………………………
正月有名な、某番組をみていてちょっと思いついた話でした。
個人的に、あれは非常に泣けるんですが。子供がいなくても。
賢んと、なっちゃんは、幼馴染でいろいろ共有の思い出があったんだろうなとか。
そういう、ちょっと祐司も入れない絆も大事だと思います。
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萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。
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