未完の恋 第二章 １１

　花嶋と香野。冬の一場面その２　傾向：他者視点　/　俺様×おバカ平凡

【問題】
｢薬｣で何かお願いします！

「…錠剤ないんスか」
「ああ、ごめんなさいこのお薬は、顆粒タイプだけなんですよー」

　ちっ、と舌打ちをした目の前の不機嫌な顔の若者に、肩を竦める。
　本格的風邪シーズンと、薬事法改正のお陰で、当薬局もお陰で対面販売が忙しい。

「げほっ、花嶋く…俺、粉、でも飲めるです」
「嘘つけ、今朝吹き出したのどこのどいつだ。黙ってろ」

　それにしても、面白い。
　今ぼくと話してる、不機嫌なイケメンが必要な風邪薬は、彼の友人のためのものらしい。
　近所だからか、時々みかける二人。
　とくに今日はマスクして、いつも以上にぼーっとしている子は、頻繁に来る。
　平常時に、熱もないのに真っ赤な顔でコンドームを買いに。

「なぁ、子供風邪薬はコイツに飲ませたらダメか？」
「お幾つですか？」
「…二十歳」
「飲むことに規制はないですが、効果が期待出来ませんよ」

　イケメンはまた、舌打ちをして並べた風邪薬の箱を眺める。
　苦い、粉薬が苦手な友人のために、真剣な顔で薬を見つめる。
　座薬も薦めたが、本人があまりにも嫌がったので、口径でこのイケメンは検討中だ。

「はだすまぐん…」
「言えてねーし、黙ってろっつったろ」
「ばい」

　鼻が詰まって息苦しそうなお友達は、黙って俯いてしまった。
　しばらくイケメンは考えた揚句、最初に薦めた顆粒タイプの薬を手に取った。

「こちらですね」
「ああ」

　一緒に、アリナミン10本入りを1パック。
　ゼリータイプの栄養補給食を、数種類。
　ふらつくお友達をしっかり支え、イケメンは荷物をぶら下げて店を出て行った。

「…どっちが病人だか」

　思わず呟く。
　昨日夕方、体温計を買いに来た時は、まだもう少し冷静さがあったのに。
　今日のイケメンは、とことん覇気がないし、顔色も悪かった。

「愛されてるなぁ」

　カウンターに並べた箱を、棚に戻しながら、独りごちる。
　きっと余計なお節介だって、あの不機嫌な彼は怒るだろうから言わなかったけど。

　どんな万能薬よりも、『愛情』が一番よく効く薬なんだよ、と。

　病人よりも泡食ってた君に、教えてあげたらよかったかな。



　………………………………

　花嶋ーーー！
　チカちゃんは、普通に子供風邪薬飲んでそうです（シロップ）
　付き合う前肺炎にさせかけた負い目があるんで、実は香野風邪引くと覿面弱い花嶋氏…でした。
　最近デレが凄いです、花嶋氏(笑)



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