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オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。

2024年11月15日 (Fri)
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2010年02月17日 (Wed)

 ⇒続きです

拍手[3回]



 やっと最後の患者を送り出し、診察室にはスタッフ全員の溜息が同時に漏れた。

「先生~、やっぱり平日半ドンはキツイですよ~」
「だな」

 片付けを歯科助手に任せ、俺は事務所に引っ込んだ。
 高梨からは、昨日の晩電話が来た。
 あいつはあいつで、同僚との忘年会を蹴って来るらしい。
 地元でうろうろしないで、いっそ遠くに行こうと、誘われた。

「……恋人たちのクリスマスか」

 初めてだ、ってのは散々あの夜高梨に話した。
 俺は歳を取らない事になってると、誕生日すら突っぱねて来たこの数年。
 歳を取って、醜くなる不安を、誰にも悟られたくなかった。
 ……高梨だけは、違う。
 胸踊る、って気分を久しぶりに味わいながら、俺は予約入れてた美容師の所に向かう準備を始めた。


 * * *


「気合い入ってますねー……」

 高梨は車に乗り込んだ俺を、上から下までしげしげと眺めて、そう言った。

「開口一番がそれか、おまえ」
「綺麗ですよ、克巳さん」
「……本当にわかってんのか、おまえ」
「わかってますよ」
「わかってねぇよ」

 人がどんだけ、緊張して待ってたかとか。
 なんで今更、高梨ごときに金と時間使って、こんなに髪だ顔だ、整えて来たか。

「どうせ、腹に入れば原型ないし、食べ物って見た目にそんな気を使う理由がわかんないんですよね。俺」
「汚ぇと、食欲失せるだろ」
「最低限でいいんじゃないんですか、だから。素材そのまんまの方が、美味しいですから」

 高梨は車を走らせながら、片手で俺のせっかくセットした髪を掻き回す。

「元が美味しい素材は、下手に料理しない方がいいです」
「……美味いか?俺」
「極上でしょ、何言ってんの克巳さん」

 どこに向かうか告げず、日が暮れかけた道を走る。
 俺も、行き先は尋ねなかった。

「ご両親は、誕生日のお祝いされないんですか?」
「断った」
「……いいんですか?」
「いい。初めて……親に、昨日俺を産んでくれた事、感謝した」

 俺が生まれた事を、喜んだ両親。
 こんな俺を、生き長らえさせてくれた両親に、初めてありがたいと思った。

「俺は、克巳さんのご両親の結婚記念日から祝いたいですね」

 穏やかな声で、高梨は呟いた。


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