恋は落ちるもの。

　特殊な趣味と、好みの問題。出会いは突然に。/フケ専青年の苦悩

【問題】
　『新生活』でお願いします。

　捨てられるもんは、全部捨てて来た、新天地。
　真新しい部屋の、慣れない匂いを感じながら、俺は段ボール箱だらけの部屋に寝転がった。
　今度こそ、失敗しない。
　大丈夫。
　カーテンがまだ掛かっていない窓を見上げ、俺は胸中で呟いた。


　――て、思っていたのに。


「え……大家さんて、あの、お婆さんじゃなかったですか？」
「ああ、ウチのお袋な。ちょっと身体壊してなー、先週から入院したんだわ」

　引越しの挨拶をしに、大家さんの部屋を訪ねて、俺は面食らった。
　嘘だろ。
　事前に、ちゃんと不動産屋と確認したのに。
　まさか、こんな罠が張られていたなんて……！

「取り敢えず、そういうワケで俺、しばらく代理大家だから。よろしく」
「あ、こちらこそ！　よろしくお願いします！」
「ウチのアパート、変人多いけど、気のいい奴ばっかりだから安心してな～」

　不精髭に、どう見ても寝起きの寝癖だらけの頭。
　肘や膝が薄くなってる、スエットの上下。
　推定40歳以上。
　なんだこの、理想の権化。

「あー……、霜村さんだっけ？」
「はい！　霜村兵吾です！」
「実はさー、ほらウチのアパート何たって老人と変人しかいねーからさー。自治会じゃねーけど、お袋助ける意味で、協力してくんない？おたくが一番若いのよ」
「よ、喜んで！」
「よかったわー。あ、俺も慣れないからさー、なんかあれば一緒に覚えてこーぜー。オッサンだけど、よろしくなぁ」

　とんでもない……！
　と、鼻息荒くなりかけた自分を抑える。
　嗚呼……なんでだ。
　バイト先のコンビニのオーナー（50代）に、報われない恋心を抱き。
　あのベルト穴はち切れそうな腹を忘れる為に、遠く引越しをしたと言うのに。
　この、全身だらしないオッサン。
　生活能力低そうな、オッサンが目の前に現れるなんて。

「霜村さん？」
「わーっ！！！！」

　意地悪なのは、誰ですか。

　新天地での新生活は、いきなり波乱の幕開けみたいです。
　あー…今度いきなり、肉じゃが作って差し入れしたら、ドン引かれるかなぁ…。






　…………………………

　40代大家息子と、フケ専恋愛脳な20代スイーツ（笑）男子。
　オッサンスキーな私としては、オッサンは受けではなく攻めに転じて欲しいです。
　というか、この青年は間違いなくネコに回る気満々だと思います(笑)

　
　

▽ランキング参加してます★お気に召したらポチリお願いします。

にほんブログ村