オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
嫌な季節が、今年もやって来た。
出勤途中のコンビニ。また並び出したあいつを見るだけで、朝から気分悪い。
あんなもん、中華街から外に出すな。
「…クソ」
レジの姉ちゃんが怪訝がるほど、悪態ついて俺はそいつを睨みつけた。
『肉まん』
まだ、忘れらんねぇ。
――あの頃そう呼ばれた、俺を。
* * *
高梨がつくづく阿呆だと思うのは、気が回りすぎて逆に空気読めねぇ時だ。
今が、まさにそれ。
「……おい、俺はコーンポタージュの缶買って来いっつったよな?」
「はい、だからこれ。あと、暖まるようにこれもです」
普通に差し出されたそれに、俺は思わず身を引いた。
狭い車の中では、そんなに距離も取れないが、それでも精一杯遠ざかる。
嫌悪感全面に出した俺に、運転席の高梨は首を傾げた。
「克巳さん、肉……」
「言うな! 口にするな、それを!」
「……え?」
鳩が豆鉄砲喰らった顔で、高梨が振り向いた拍子に手からヤツが転がり落ちた。
俺の、膝に、ヤツが乗る。
「ーーーっ!」
「ちょ、大袈裟でしょ!そんな熱くないでしょ、克巳さん。……克巳、さん?」
声にならない悲鳴ってのを体感する暇もなく、猛烈な寒気が襲って来た。
全身、総毛立つ。
鳥肌なんて、生易しいモンじゃねぇ。
情けなくも、奥歯がカチカチ鳴り出した俺に、漸く高梨は異変を察知したらしい。
「克巳さん! これ? これ避ければいい!?」
「……し、視界、から、消せ……っ!」
「わかりました、ちょっと待ってて」
まだ温かいそれを無造作に掴み、高梨は今出したビニール袋にヤツを詰めると、運転席を飛び出した。
肩を抱き震えながら見ていた俺の前に、すぐ苦笑と真剣さの混じった顔の高梨が戻って来た。
「……ごめんね、配慮足りなくて。平気?」
「俺も、言ってねぇから、謝んな」
去年の冬も、それで喧嘩別れした。
一昨年は、しつこく問い詰められて俺がキレた。
……高梨とだけは、どうしてかそうなりたくなくて。
言えないまま、季節が変わっていた。
「ポタージュ、飲める?」
「……ああ」
まだ震える指先に舌打ちしつつ、プルタブを上げられた缶を受け取る。
やたら心配そうな顔の高梨に、俺はやっと顔の強張りを解いた。
「アレ見ると、昔思い出して、ダメなんだ」
「子供の頃、食べ過ぎた……とか?」
控え目な問い掛けに、俺は首を振った。
「違う。俺のあだ名、『肉まん』だったからだ」
…………………………………
克巳さんの正念場、ってやつでしょうか。
このまま、年貢の納め時となるのか、はたまた。
12月24日の克巳さん誕生日までには、決着を付けたいと思います。
よろしければ、お付き合いくださいませ。
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【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。