オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
一昨年、初めて中学の同窓会に出た。
受付で怪訝な顔をされ、あの当時と違った注目を集めて。
俺の10年越しの『変身』は、成功したんだなとようやく…実感した、瞬間だった。
* * *
「克巳さん……この道って」
「職場行く。そこに、お前が前から見たかった卒アル置いてる。見せてやるよ」
前髪を指先で弄りながら答えた俺に、高梨は重苦しい息を吐いたのがわかった。
「……見せてぇんだよ。変わりっぷりを」
「克巳さん」
「自棄になってるワケじゃねぇよ、タイミングってヤツだ」
――どうせ、隠し通せるもんじゃねぇ。
生まれ育った町に、あえて住み続けているのは意地だ。
それでも、誰も気づかなかった。あの『肉まん』の俺だと。
ハンドルを握る横顔が、奥歯に力を入れているのがわかる。
俺はそれに、敢えて何も言わなかった。
鍵を開け、警備を解除して、中に入る。
診察台に高梨を座らせ、俺は真っ直ぐに貴重書類が入ったキャビネットの鍵も、開けた。
「……俺は、ガキの頃から親に甘やかされて育った。親は俺の我が儘を、諌めなかった」
書類の後から、緑色の憎たらしい厚い表紙のそれを引っ張り出す。
外カバーは、卒業式の後即行捨てた。
中身だけは、二度とこの姿にならない自戒と復讐のために、わざと捨てずに持ち歩いた。
「外で遊ぶのが大嫌いでな、その癖スナック菓子と肉が大好きだった。食い過ぎて気持ち悪くなるぐらい、食った。気がつきゃ立派な、肥満児の出来上がりってな」
キャビネットを閉じ、俺は高梨にアルバムを放り投げた。
高梨は、しばらくそれを眺めていたが、躊躇いがちに表紙を開いた。
瞬間的に、眉をしかめる。
「デブなスネ夫は、ジャイアンより人気ねぇんだ。しっかり見ろ、高梨」
「……けど、克巳さん」
「見ろよ、俺の大変身。そんなラクガキした連中は、同窓会行って誰も俺に気付かなかった。男も女も。だから、俺を1番馬鹿にした野郎を、誘った。ノコノコ、そいつはホテルに付いて来たぜ」
ラクガキだらけのアルバムを、高梨は無言でめくる。
その間、俺は俯いて爪先を見ていた。
あいつが口にする一言が……怖い。
これを見せるのは、二人目だ。
一番最初に、付き合った男とこいつと。
懐かしい嘲笑が、幻聴のように頭の中でこだまする。
ぱたん、と音を立てアルバムが閉じられたのがわかった。
「やばいなぁ……、俺。克巳さん、俺病気かも」
「……あ?」
「克巳さん門外漢だから、相談しにくいけど。脳と目が、とりあえずヤバイよ、俺」
「なにが……」
高梨は、いつもと変わらない声音で、困惑気味な表情を俺に向けた。
訝る俺に、高梨は僅かに表情を引き締める。
「俺の眼変だよ。全然、変わってるように、見えないんだもん。可愛い克巳さんと、今の綺麗な克巳さんが」
奴は、静かにそう告げて立ちあがった。
………………………
こ、こんな引きでスミマセン!
続きはまた!!!
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【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。