オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
助けを求めるように伸ばされた腕が、畳を滑る。
僅かに引っ掛かった畳の縁(へり)に爪を立て、背後の男からずり上がろうとする。
数十センチのところにある襖に、指先を少年は必死に伸ばしていた。
しかし、無駄なあがきとばかりに、腰を掴んだ男は自分の方へ華奢な身体を引きずり倒した。
「むーだ。向こうにいるのは、お前の味方じゃねぇから、助けてくれねーよ」
唇を噛み締め、閉じた襖を濡れた眼で見上げる姿は、憐憫を誘う。
しかし男は、無情に背中に乗り上げ、薄い肩を押さえつけた。
「恨むなら、お前の顔恨めよ」
――あの坊ちゃんに似ているのが、運の尽きだ。
声に出さずに、服を剥ぎ取りながら男は呟いた。
主によく似た面差しが、主にはない表情で自分を見つめる。
それは嗜虐心と、庇護欲を同時に男に駆り立てた。
「……向こうも、今頃ヤキモキしてるんだろうけどな」
声を殺して震える背中を抱え、男はやや憐れむように襖を見つめ、言葉を落とした。
***
襖の向こう側から漏れ聞こえる啜り泣きに、握り締めた拳を一度畳に叩きつけた。
正座のまま、男は襖を睨みつけ、奥歯を噛み締める。
気を抜くと、襖を開け中に飛び込んでしまいそうな衝動を、必死に制御する。
叩きつけた拳を解き、指先で畳を無意識に男は掻いた。
爪に食い込む草が、柔らかい肉を刺す。
それは、まるで自分の心を刺すような痛みを誘発した。
自分には、彼を助けることも、心痛を感じる資格もない。
こうして場を設け、彼を放り込んだのが、自分なのだから。
しかしながら、今あの少年を抱いている男に対し、激しい殺意が沸いて来る。
助けを求める、弱々しい声が耳にこびりつく。
恨んでいるだろう少年の顔を思い、男は顔を伏せた。
彼は、主ではない。
主に似た、身代わりなのだ。
似ているから、惑わされているだけだ。
似ていないから、惑わされる。
主ではないから、使用人達の鬱憤晴らしの慰みものに出来る。
当然の扱いなのだ、これは。
そう言い聞かせなければ、あの少年を掠ってしまいたくなる。
畳が傷むほど指先に力を込め、男はただ、行為が終わるのを耐え続けた。
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畳、と聞いて真っ先に思い描いたのが「爪で掻きむしる畳」だった、変態です。
しかも、隣り合わせの部屋での、焦らしプレイ。
葛藤と、苦悩と。
救われる展開に今後、なっていけばいいなぁと思っています。
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好きな系統は、
【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。