オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
「……結婚式の、招待状? 用って……、これかよ」
「勘違いするな、姉貴のだ」
妙な会話だ。
落胆の色を見せた志賀に、俺は宥めるような言い訳をしてみせた。
封筒の裏に印刷された姉と新郎の名前に、安堵した顔の志賀を見つめながら、煙草を咥える。
志賀が、実際俺に対しどんな感情を抱いているのか、尋ねたことはない。
今の反応が、どういう意味なのか……考えても答えの見えない事を考えながら、煙を吸い込んだ。
「賢とこも、もうすぐなんだろ?」
「……ああ、年明けには結納予定だ」
「じゃ、賢の式に出ない代わりにお姉さんの出るか」
招待状に目を落としたまま、明るい声で話す志賀に、俺は心臓を掴まれるような痛みに襲われた。
志賀は、元来の前向きな性格と持ち前の明るさが、この二年で大分戻ってきていた。
由梨の存在も、その関係も、責めるどころかひたすら陰に徹する勢いだ。
俺の将来を思い、いい加減切り捨てる覚悟をしろとまで迫る。
引き止めているのは、俺だ。
踏ん切りが、つかないまま、ずるずるとこの名も無い関係を引き伸ばしている。
「友達面して、お前の式には行けねぇだろ。てか、友達じゃねーしな」
「……祐司」
「都合悪いと、お前名前呼んでごまかすよな」
困ったように笑う志賀に、俺は腕を伸ばしていた。
そのまま、素直に抱き竦められた志賀の髪に、顔を埋める
「……こういうのは、由梨ちゃんにしてやれよ」
抱き返す事のない志賀に、焦れてますます俺は力を込めて抱き締めた。
何を伝えたらいいのか、わからない。
選ばなければいけない道は、一つだけだとわかっているのに。
このまま、手を離してしまえば。一生、二度と捕まえる事が出来ない恐怖は、あの時夏紀が奪い取りに来ると感じた恐怖に似ていた。
名前を呼ぶことで、占有意識を持ち、少しでも一緒に時を過ごすだけで、心が軽くなる。
今更偽り様のない志賀の前では、唯一俺は心許せる安堵をさえ感じるようになっていた。
この温もりと、意思の強い瞳。
それがただ、明確に俺のモノにはならない現実。
「もう、俺大丈夫だし。賢は賢で、ちゃんと由梨ちゃん大事にしてやれよ」
「……わかっている」
「お前の人生狂わせる方が、俺なっちゃんに悪いよ。なっちゃんは、お前の幸せ絶対祈ってるはずだし、邪魔できねーよ」
「祐司」
「俺から、解放してやるよ、賢。本当にもう、これ以上ウチ来んなよ。大事にしなきゃなんねぇ相手、間違えんな」
肩に当たる額も、腕の中の背中も、細かく震えているのがわかった。
初めから、わかっていた選択だというのに、俺は頷けなかった。
ただ、その夜は寄り添うように祐司を、抱き締め続けた。
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【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。