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オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。

2024年11月15日 (Fri)
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2009年10月22日 (Thu)

 過去編4話です。――婚約者と、 あいつ。

拍手[1回]



 あの日から、一年。
 俺は無事就職をし、志賀はギリギリで大学を卒業した後、フリーター生活を送っている。

 志賀はこの一年、一度も夏紀の墓前には行かなかった。
 自責の念を、俺への恨みに転嫁させた後、あいつは俺に依存することで、生き長らえていた。
 夏紀に申し訳ないと、志賀は繰り返す。
 俺も、……夏紀に合わせる顔などとっくに無くしていた。
 先日の命日は、多忙を理由に出向くのを見合わせたぐらいだ。
 その日、俺達は一年前とは異なり、互いに同意の上で、ただ身体を貪りあっていた。
 ろくな会話もない、身体だけの関係。
 それが今の、俺達だった。

  ***

「いくら忙しいからって、デートも月一はどうかと思うんだけど」

 可愛いらしく頬を膨らませた由梨に、俺は苦笑を返した。
 日曜日の混み合うレストランの窓際で、向かい合い俺達は久々の逢瀬を楽しんでいた。

「悪かった、……6月に入って俺も半人前なりに仕事が増えたんだ」
「わかるけど。あ、私ね最近料理教室通い出したんだよ」

 無邪気に笑う由梨は、ささくれ立つ俺を支える存在だ。
 気付かなかったが、同じ高校だったと、大学に入り告白された時に知らされた。
 数年に渡り、俺に片想いをしていた、その気持ちに感心して付き合い始めた由梨。
 愛おしいと、思う。
 派手ではないが、愛くるしい部類に入る顔。
 腕にすっぽり収まる、小柄な身体。本人は気にしているが、掌に少し余る乳房も、気に入っている。
 由梨と、結婚をする事に、俺はなんの迷いも持っていなかった。
 会社に、仕事に慣れたならば、手順を踏んで由梨を娶る事が、当たり前のように描いていた未来予想図だった。
 だったと、過去形で考える事にに自嘲する。
 ……多分、一年前の俺ならば、ここで由梨の機嫌を取る行動を、何か出来たんだろう。
 それが今、少しだけ――煩わしい。
 殆ど今日は、義務感だけに駆られてこの場に座っている気分だ。

「賢ちゃん?聞いてる」
「……ああ、悪い。少しボーッとしてた」
「やっぱり忙しいのに、無理したの?」
「違うさ」

 予想外に、絡まった糸の先にいるあいつを思うと、少しではない罪悪感を覚える。
 ただそれが、どちらに対してなのかが…判然としなかったが。
 結果、この一ヶ月志賀に逃げていた。
 昨夜、志賀は言った。

「俺って、もしかしなくても愛人だろ? ……彼女、平気?」

 俺はそれに、答えられなかった。
 由梨を大切に想う、それには偽りはない。――それは、男のけじめとして忘れてはならない。
 だが、あいつを手放す気にはなれない。
 我ながら最低だと思うが、俺は由梨に相槌を打ちながらも頭の中で、あの部屋に一人置いて来た志賀のことを考えていた。

 あいつがやっと、一年をかけて思い出したあの、笑顔を。 


 

 

 


 

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