オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
あの日から、一年。
俺は無事就職をし、志賀はギリギリで大学を卒業した後、フリーター生活を送っている。
志賀はこの一年、一度も夏紀の墓前には行かなかった。
自責の念を、俺への恨みに転嫁させた後、あいつは俺に依存することで、生き長らえていた。
夏紀に申し訳ないと、志賀は繰り返す。
俺も、……夏紀に合わせる顔などとっくに無くしていた。
先日の命日は、多忙を理由に出向くのを見合わせたぐらいだ。
その日、俺達は一年前とは異なり、互いに同意の上で、ただ身体を貪りあっていた。
ろくな会話もない、身体だけの関係。
それが今の、俺達だった。
***
「いくら忙しいからって、デートも月一はどうかと思うんだけど」
可愛いらしく頬を膨らませた由梨に、俺は苦笑を返した。
日曜日の混み合うレストランの窓際で、向かい合い俺達は久々の逢瀬を楽しんでいた。
「悪かった、……6月に入って俺も半人前なりに仕事が増えたんだ」
「わかるけど。あ、私ね最近料理教室通い出したんだよ」
無邪気に笑う由梨は、ささくれ立つ俺を支える存在だ。
気付かなかったが、同じ高校だったと、大学に入り告白された時に知らされた。
数年に渡り、俺に片想いをしていた、その気持ちに感心して付き合い始めた由梨。
愛おしいと、思う。
派手ではないが、愛くるしい部類に入る顔。
腕にすっぽり収まる、小柄な身体。本人は気にしているが、掌に少し余る乳房も、気に入っている。
由梨と、結婚をする事に、俺はなんの迷いも持っていなかった。
会社に、仕事に慣れたならば、手順を踏んで由梨を娶る事が、当たり前のように描いていた未来予想図だった。
だったと、過去形で考える事にに自嘲する。
……多分、一年前の俺ならば、ここで由梨の機嫌を取る行動を、何か出来たんだろう。
それが今、少しだけ――煩わしい。
殆ど今日は、義務感だけに駆られてこの場に座っている気分だ。
「賢ちゃん?聞いてる」
「……ああ、悪い。少しボーッとしてた」
「やっぱり忙しいのに、無理したの?」
「違うさ」
予想外に、絡まった糸の先にいるあいつを思うと、少しではない罪悪感を覚える。
ただそれが、どちらに対してなのかが…判然としなかったが。
結果、この一ヶ月志賀に逃げていた。
昨夜、志賀は言った。
「俺って、もしかしなくても愛人だろ? ……彼女、平気?」
俺はそれに、答えられなかった。
由梨を大切に想う、それには偽りはない。――それは、男のけじめとして忘れてはならない。
だが、あいつを手放す気にはなれない。
我ながら最低だと思うが、俺は由梨に相槌を打ちながらも頭の中で、あの部屋に一人置いて来た志賀のことを考えていた。
あいつがやっと、一年をかけて思い出したあの、笑顔を。
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【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。