オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
澄み渡る冬の青空を見上げ、俺はこれから取り交わす結納に溜息をついた。
白い吐息が、薄れながら消えていく様に、あいつの背中を思い出す。
……選択したのは、俺だ。あいつも、受け入れた。
間違えてはいないはずの選択が、胃を締めつける。
「賢、結納に緊張するものじゃないぞ」
不意に背中を父に叩かれ、俺は慌てて首を巡らせた。
「もっと嬉しそうにしないか、おまえは本当に難しい顔ばかりしてだな」
「まあまあ、お父さん」
小言を言い出した父を宥める母に、俺は苦笑を返した。
そう、考えるのは由梨の事だけだ。
――それで、いいはずだ。
言い聞かせるように、俺は胸を占める思いにそう、言い聞かせた。
***
『ね、招待状の宛名書き進んでる?』
「ああ……間もなく終わるな」
『賢ちゃんに押し付けて、ごめんね』
「構わない、男が役に立つのはこれぐらいだからな」
リスト片手に、電話の向こうの由梨を思い俺は口許を緩めた。
由梨たっての希望で、6月に挙式をすることになった。
月日はあっという間に流れ、準備も滞りなく進んでいる。
着実に、新し生活への準備が、整っていくのを、どこか傍観者の気分で見ている俺を置いて。
奇しくも、会場を押さえた俺達の挙式の日は――夏紀の命日、前日だった。
「他に問題はないか?」
『問題? んー……あるよ、賢ちゃんが構ってくれない。本当にわたしが好きかなって、わかんない』
「由梨」
『冗談だよ。でも、マリッジブルーってあるんだから、ちゃんと支えてね』
「わかったよ」
一瞬、胸を突かれた。
由梨を愛している、その態度や気持ちに、疑念が沸くような隙が、俺のどこかにあるのか。
『じゃあね、賢ちゃん。おやすみ』
「おやすみ」
俺の中に沸いた疑念に気付く事なく、由梨は電話を切った。
書きかけの招待状を見つめ、俺は二つ避けて置いた封筒を掴み上げた。
「……あいつを呼ぶのは、残酷だと思うか? 夏紀」
一通は夏紀へ、家族に宛て送る。
もう一通は……迷いに迷ったが、あいつへ、祐司へ送るつもりだ。
年末に最後に抱いて以来、顔も声もどうしているかも、知らない。
一度だけ、メールが来ただけだ。
祐司の部屋に置いてあった、俺の私物をどうしたらいいかと。
「……まだ、迷うのか」
眼前にある、彩られた幸せが、一瞬霞む。
夏紀がいたら、夏紀がもし言っていたように、『運命の魂の片割れ』を見つけてくれていたならば。
仮にその相手が、男であっても、俺は悩むことはなかったのだろうか。
あいつの言葉は、根拠はなくとも俺は全幅の信頼を置いていた。
そんな、不思議な男だった。
優柔不断に陥りやすい俺を、導いてくれていた幼馴染。
頼る相手がいなくなった今、俺は自分で下す決断に自身が持てない。
だからきっと……、迷っている。
招待状を発送した、その夜。
俺は久しぶりに、夏紀の夢を見た。
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【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。