忍者ブログ
2024.11│ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。

2024年11月15日 (Fri)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2009年07月03日 (Fri)


 第3話。

拍手[3回]



 一人でぼーっとしながら、体育館の隅で過ごすのが、僕の体育の時間。
 個人競技だといいけど、団体競技の今日みたいなバスケットボールだともう駄目。

「高見、次俺らの班だけど」
 
一応義理で呼びに来たんだろう相手に、僕はふいっと顔を反らした。
 目が、出るなって言ってる。
 僕は抱えた膝に力を込めて、震える声を絞り出した。

「ぼ、僕が、出るわけないだろっ」
「はぁ? 知るか、マジおまえの態度ムカつく」

 呆れるより怒りを顕わにしたクラスメートに、僕はびくりと身を竦めた。
 なんで、通じないんだろう。
 それが、みんなの願いなんだろうに。
 僕を振り返ることなく、コートに入って行く班のみんな。
 対戦相手の中に、あいつを見つめて僕の心臓が一瞬、きゅっとなった。
 僕を、好きだと言ったあいつ。……あんな真似まで、したのに。
 今朝はいつものように、女子に可愛いだの愛してるだの、平然と言ってて。
 全然、信用出来ない。
 どうせからかって、遊んでるだけなんだ。
 親切な顔だって、嘘なんだ。
 試合が始まり、コートの中を舞うように動く山浦に、僕は唇を噛んで俯いた。
 女子の声援に、余裕で手を振り返して。
 あいつの投げたボールは、魔法みたいに、ゴールに吸い込まれていて。
 楽しそうに笑って、僕なんか目に、入ってないみたいで。

「……キライ」

 やっぱり、あいつは遠い世界の人間なんだ。

「危ないっ」

 僕が、下を向いてぼーっとしていたら突然、そんな叫び声が聞こえた。
 間抜けに顔を上げたら、迫ってくるボール。
 え、と思う暇もなかった。
 目をつぶって、衝撃に耐える為頭抱えようかとした瞬間。
 伸びて来た腕が、僕を横に引っ張りた。
 そのまま、胸に押し付けられる。

「ふう、セーフ」

 頭上から聞こえた声は、山浦の声だった。

「な、なんで」

 驚く僕に笑いかけると、山浦は床に転がったボールを拾いあげた。

「山浦っ、試合中だろ! ボール死守しろよ」
「えぇ~? ヤだよ、当たったら痛いのに、わかってて他人に投げるような奴のボールなんて、守りたくない」
「は?」
 山浦チームの奴がぽかんとしてる中で、山浦は手にしたボールを一人の生徒に投げつけた。
「っぶね、何すんだよ山浦!」
「お返し」
「はぁ? 意味わかんね」
「わかんなくていいよ、ただもう二度と、高見狙わないで。気に入らないなら、そっとしててよ、高見の事は」
 僕を庇うように前に立つ山浦を、クラスメートが不思議そうに眺めてるのがわかる。
「……チッ、誰が構うかよ。そんな根暗な奴」

 僕にボールを投げた生徒は、舌打ちをしてコートに戻っていった。
 根暗な奴。
 言われ慣れた言葉なのに、山浦を前にして言われると、胸が痛んだ。
 やっぱり僕と山浦じゃ、世界が違い過ぎる。
 こんなに今、近くにいるのに。

「ん? 高見?」

 振り向いた山浦が、不思議そうな顔をする。
 僕は無意識に、山浦のTシャツの裾に手を伸ばしていた。
 
「あー、怖かった? 顔色悪いし、保健室行く?」

 人が、いっぱいいるのが怖い。
 みんなが見てるのが、怖い。
 ぎゅっと、無言で裾を握る僕の手を上から大きな掌で包み込んで、山浦は安心させるように笑う。

「じゃ、保健室行こうか」
「はぁ? おまえ試合途中だろ!」

 山浦のチームが、僕らの前に立ち塞がった。
 僕は山浦の背中に隠れるように、しがみつく。

「んー、今大事なの試合じゃないし」
「はぁ?」
「俺が大事なのは、こっち」

 山浦はそう言って、僕を軽々と担ぎあげた。
 いくら身長差があるからって、人を荷物みたいに!
 でも、経験したことない高さからみす視界が怖くて、僕は仕方なく山浦にしがみついた。

「じゃ、そーいうことで」

 誰もが呆気に取られる中、山浦は僕を担いで体育館を後にした。

 

「高見って、小さいだけじゃなくて軽いよねぇ。女子より細い?」
「わ、悪かったな! チビで、ガリガリで!」
「あー、まぁそういう捉え方もするけど」

 たまたま保健医が不在だった保健室で、僕達はベッドに並んで腰掛けていた。
 どんな格好でも様になる男・山浦は、片膝を立てそこに顎を乗せて僕の顔を見つめている。

「俺としては、コンパクトで抱きしめやすいな、って解釈だったんだけど」

 伸びてきた指先が、悪戯に髪を弄ぶ。
 僕は頭を振るい、その指先から逃げようとした。
 でも、あっさり長い腕が僕を捉えて、また抱え込む。

「ね? ちょうどよく収まる」
「やだっ、離せよッ」
「俺こそヤだ、せっかくの二人きりなのに」

 小さい溜息をつくと、山浦は僕の頭に今度は顎を乗せて来た。

「高見は、この小さい体に、何をそんなに抱えてるの?」
「なに……」
「一人が良いって言いながら、いつも淋しそうな顔してるくせに。俺が女の子と話してると、すごく気にしてるくせに」
「して、ないっ」
「確かに、俺は自慢じゃないけど、気持ちも下半身も、誠実にはあんま出来てない……でも」

 ぎゅ、と抱く腕の強さに、僕は胸を掴まれた気がした。

「高見を傷つけようなんて、全然思ってないんだ。それは本当」
「そんなの……」

 そんなの、わからない。
 アイツだって、最初はそうだった。
 大丈夫、味方だから、親友だから――そう言ったのに。

「何が怖いの? 俺? それとも別の奴?」
「キミを怖くなんか……っ」
「そうだよね、高見俺が側にいるとちょっと気を緩めてるもん」
「な、違っ、うそっ」
「嘘じゃないよ、今も安心してるでしょ?」

 胸に頭を押し当てられて、僕は思わず目を閉じた。
 聞こえてくる心音が、僕の中の何かを落ち着かせる。
 すごく心地よくて。
 僕は山浦にしがみついた。

「可愛いなぁ、高見」
「か、可愛いくないしっ! こ、こんなことして、安心してるとか、き、気持ち悪いだろっ! 本当は、心の中、で、馬鹿にしてるんだろッ」

 押し付けられた山浦の胸が、温かくて。どうしよう、僕泣きそうだ。
 だってこんな風に、僕を認めてなんて、くれなかった。
 怖い。
 今、こうしてる山浦が、もしこれが嘘だって言ったら。
 僕は、もう、どうしていいかわからない。

「してないよ。高見が甘えてきてくれて、超嬉しい。俺」

 宥めるように、背中をさする手に、僕は目の奥がツンとしてきた。
 この場所が、居心地よくて。
 山浦の声が、触れる指先が、温もりが、心地よくて。
 離したくない、と思ってしまった。
 失いたくない、と。
 だから、期待してもいい?
 山浦は、あいつみたいにならない?

「……あ、あの」
「何? 可愛い高見」
「すこし、話、聞いてくれる?」
「少しどころか、何時間でもどうぞ」

 頭を撫でる山浦の手の心地よさに眼を細めながら、僕は重い口を開いた。

▽ランキング参加してます★お気に召したらポチリお願いします。
 にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
←No.8No.9No.10No.11No.12No.13No.14No.15No.16No.17No.18
LINK・RANKING
お世話になってます。
BL♂GARDEN様以降はランキング・検索サイトです。 お気に召したら、ポチっと頂ければ、こっそり管理人喜びます。
最新CM
[11/26 小春]
訪問者
 ご来訪ありがとうございます。
アクセス解析
プロフィール
HN:
智祢
HP:
性別:
女性
趣味:
TVダラ見(ドラマとバラエティ) 妄想
自己紹介:
 腐女子歴人生の半分。
 好きな系統は、
 【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
 萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。