オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
一人でぼーっとしながら、体育館の隅で過ごすのが、僕の体育の時間。
個人競技だといいけど、団体競技の今日みたいなバスケットボールだともう駄目。
「高見、次俺らの班だけど」
一応義理で呼びに来たんだろう相手に、僕はふいっと顔を反らした。
目が、出るなって言ってる。
僕は抱えた膝に力を込めて、震える声を絞り出した。
「ぼ、僕が、出るわけないだろっ」
「はぁ? 知るか、マジおまえの態度ムカつく」
呆れるより怒りを顕わにしたクラスメートに、僕はびくりと身を竦めた。
なんで、通じないんだろう。
それが、みんなの願いなんだろうに。
僕を振り返ることなく、コートに入って行く班のみんな。
対戦相手の中に、あいつを見つめて僕の心臓が一瞬、きゅっとなった。
僕を、好きだと言ったあいつ。……あんな真似まで、したのに。
今朝はいつものように、女子に可愛いだの愛してるだの、平然と言ってて。
全然、信用出来ない。
どうせからかって、遊んでるだけなんだ。
親切な顔だって、嘘なんだ。
試合が始まり、コートの中を舞うように動く山浦に、僕は唇を噛んで俯いた。
女子の声援に、余裕で手を振り返して。
あいつの投げたボールは、魔法みたいに、ゴールに吸い込まれていて。
楽しそうに笑って、僕なんか目に、入ってないみたいで。
「……キライ」
やっぱり、あいつは遠い世界の人間なんだ。
「危ないっ」
僕が、下を向いてぼーっとしていたら突然、そんな叫び声が聞こえた。
間抜けに顔を上げたら、迫ってくるボール。
え、と思う暇もなかった。
目をつぶって、衝撃に耐える為頭抱えようかとした瞬間。
伸びて来た腕が、僕を横に引っ張りた。
そのまま、胸に押し付けられる。
「ふう、セーフ」
頭上から聞こえた声は、山浦の声だった。
「な、なんで」
驚く僕に笑いかけると、山浦は床に転がったボールを拾いあげた。
「山浦っ、試合中だろ! ボール死守しろよ」
「えぇ~? ヤだよ、当たったら痛いのに、わかってて他人に投げるような奴のボールなんて、守りたくない」
「は?」
山浦チームの奴がぽかんとしてる中で、山浦は手にしたボールを一人の生徒に投げつけた。
「っぶね、何すんだよ山浦!」
「お返し」
「はぁ? 意味わかんね」
「わかんなくていいよ、ただもう二度と、高見狙わないで。気に入らないなら、そっとしててよ、高見の事は」
僕を庇うように前に立つ山浦を、クラスメートが不思議そうに眺めてるのがわかる。
「……チッ、誰が構うかよ。そんな根暗な奴」
僕にボールを投げた生徒は、舌打ちをしてコートに戻っていった。
根暗な奴。
言われ慣れた言葉なのに、山浦を前にして言われると、胸が痛んだ。
やっぱり僕と山浦じゃ、世界が違い過ぎる。
こんなに今、近くにいるのに。
「ん? 高見?」
振り向いた山浦が、不思議そうな顔をする。
僕は無意識に、山浦のTシャツの裾に手を伸ばしていた。
「あー、怖かった? 顔色悪いし、保健室行く?」
人が、いっぱいいるのが怖い。
みんなが見てるのが、怖い。
ぎゅっと、無言で裾を握る僕の手を上から大きな掌で包み込んで、山浦は安心させるように笑う。
「じゃ、保健室行こうか」
「はぁ? おまえ試合途中だろ!」
山浦のチームが、僕らの前に立ち塞がった。
僕は山浦の背中に隠れるように、しがみつく。
「んー、今大事なの試合じゃないし」
「はぁ?」
「俺が大事なのは、こっち」
山浦はそう言って、僕を軽々と担ぎあげた。
いくら身長差があるからって、人を荷物みたいに!
でも、経験したことない高さからみす視界が怖くて、僕は仕方なく山浦にしがみついた。
「じゃ、そーいうことで」
誰もが呆気に取られる中、山浦は僕を担いで体育館を後にした。
「高見って、小さいだけじゃなくて軽いよねぇ。女子より細い?」
「わ、悪かったな! チビで、ガリガリで!」
「あー、まぁそういう捉え方もするけど」
たまたま保健医が不在だった保健室で、僕達はベッドに並んで腰掛けていた。
どんな格好でも様になる男・山浦は、片膝を立てそこに顎を乗せて僕の顔を見つめている。
「俺としては、コンパクトで抱きしめやすいな、って解釈だったんだけど」
伸びてきた指先が、悪戯に髪を弄ぶ。
僕は頭を振るい、その指先から逃げようとした。
でも、あっさり長い腕が僕を捉えて、また抱え込む。
「ね? ちょうどよく収まる」
「やだっ、離せよッ」
「俺こそヤだ、せっかくの二人きりなのに」
小さい溜息をつくと、山浦は僕の頭に今度は顎を乗せて来た。
「高見は、この小さい体に、何をそんなに抱えてるの?」
「なに……」
「一人が良いって言いながら、いつも淋しそうな顔してるくせに。俺が女の子と話してると、すごく気にしてるくせに」
「して、ないっ」
「確かに、俺は自慢じゃないけど、気持ちも下半身も、誠実にはあんま出来てない……でも」
ぎゅ、と抱く腕の強さに、僕は胸を掴まれた気がした。
「高見を傷つけようなんて、全然思ってないんだ。それは本当」
「そんなの……」
そんなの、わからない。
アイツだって、最初はそうだった。
大丈夫、味方だから、親友だから――そう言ったのに。
「何が怖いの? 俺? それとも別の奴?」
「キミを怖くなんか……っ」
「そうだよね、高見俺が側にいるとちょっと気を緩めてるもん」
「な、違っ、うそっ」
「嘘じゃないよ、今も安心してるでしょ?」
胸に頭を押し当てられて、僕は思わず目を閉じた。
聞こえてくる心音が、僕の中の何かを落ち着かせる。
すごく心地よくて。
僕は山浦にしがみついた。
「可愛いなぁ、高見」
「か、可愛いくないしっ! こ、こんなことして、安心してるとか、き、気持ち悪いだろっ! 本当は、心の中、で、馬鹿にしてるんだろッ」
押し付けられた山浦の胸が、温かくて。どうしよう、僕泣きそうだ。
だってこんな風に、僕を認めてなんて、くれなかった。
怖い。
今、こうしてる山浦が、もしこれが嘘だって言ったら。
僕は、もう、どうしていいかわからない。
「してないよ。高見が甘えてきてくれて、超嬉しい。俺」
宥めるように、背中をさする手に、僕は目の奥がツンとしてきた。
この場所が、居心地よくて。
山浦の声が、触れる指先が、温もりが、心地よくて。
離したくない、と思ってしまった。
失いたくない、と。
だから、期待してもいい?
山浦は、あいつみたいにならない?
「……あ、あの」
「何? 可愛い高見」
「すこし、話、聞いてくれる?」
「少しどころか、何時間でもどうぞ」
頭を撫でる山浦の手の心地よさに眼を細めながら、僕は重い口を開いた。
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