オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
見える外界は、ベランダに面した窓からの世界のみ。
一日、太陽の位置を眺めている。
嫌いな時間帯は、朝7時から9時の間。
朝独特の慌ただしい音、通りに駆け出す足音。
周囲の音が無言で、俺を非難している気がする。
引きこもり、と自覚するようになって何年になるんだろう。
訪ねる人間は、宅配便の配達員ぐらいだ。
幸い両親が、こんな俺を養えるだけの蓄えを遺してくれていたので、生活はギリギリ、ネットを通じて買い物をして凌いでいる。
今日は、その宅配便が来る事に少しだけ、そわそわしていた。
何年かぶりに、服を買った。
陽に当たらなくなり、すっかり色が抜けた肌に、昔着ていた服が似合わない気がして。
そして、あの人に会うためにせめてもの礼儀として。
いつもの配達員が来るのを、今日はそわそわしながら、待っていた。
***
「……なんか雰囲気、違いますね。いつもと」
「え?」
玄関に段ボールを置いて、いつもの担当者は俺を見て、目を丸くした。
伝票にサインをしていた俺が、慌てて顔を上げれば、すっと顔を伏せられてしまった。
「すみません、余計な事言いました」
「い、いや。そんな…ちょっと俺も、心境の変化…というか」
「そうなんですか」
俺より確実に若い、生命力に溢れた配達員が、大人びた表情で、静かに微笑んだ。
何人もいる配達員の中で、この人だけは唯一、俺に話しかけてくれる。
短い会話ながら、俺が人として生きているのを思い出せる瞬間だった。
だからつい、口が滑ってしまった。
「……外に、出てみようかと思うんだ」
配達員が、外に向けドアを開けたまま、振り向いた。
「なんか、鳥籠から鳥が逃げる気分ですね。……そんな宣言に聞こえましたよ」
「鳥なんて、綺麗なもんじゃないよ……いい歳した男だから」
「でも俺にしたら、餌を与えに来る気分だったんで。勝手な思い込みなんで、気にしないで下さい」
「……餌、運んでるのは、事実だし。飼われてるのかな、俺」
「だと、よかったけど。残念ながら俺は、飼い主じゃないので」
通路に出た彼は、目礼してエレベーターホールに向かう。
別れ際の顔が、いつもより少し、疲れていたように感じた。
「暑いんだな……外」
外気に当たりながら、トラックに乗り込む姿を見送る。
本番は、明後日だ。
……………………………
外出時の、おめかしを心配頂いたので、洋服買うには…と考えまして。
唯一の接触者です、シマネコ氏の。
配達員が、彼に対してどんな感所を頂いているかは、推して知るべし…ということで。お願いします。
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好きな系統は、
【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。