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オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。

2024年11月15日 (Fri)
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2009年09月01日 (Tue)

 本番当日です。引きこもりラジオ局へ行くの巻。

拍手[2回]



 中学生か、いや、小学生に戻った気分だ。
 遠足にだって、こんなに胸踊らせなかった俺が。
 久しぶりに湯舟に湯を張って、風呂に1時間以上入った。
 肌擦り過ぎて赤くなった事に、我ながら馬鹿みたいだと思ったが、身を清めるためだと言い聞かせた。
 髭を剃って、顔も念入りに擦って。
 シャンプー3回もした。
 髪をさっぱりさせるまでの踏ん切りはつかなかったので、失礼でもこの落ち武者みたいな頭で行くしかない。

「デートでもあるまいし、バカバカしいよな……」
 
 高揚する気持ちと裏腹に、こんな俺が出て行ってがっかりされるのでは、という思いが渦巻く。
 あの人は、大丈夫だと言ってくれたけれど。
 鏡に映る俺は、顔色の悪いやつれた男で。

「……死人みたいだ」

 息だけをしている、動く人形。
 けれど、今日だけは少し、人間らしく振る舞ってみたい。



 昨日、いつもの宅配員の彼が、わざわざ路線図を置いていってくれたのを上着のポケットに忍ばせた。
 ネットで一応、乗り換えは確認したが、久しぶりの電車はやっぱり少し不安だ。
 週末で、混み合う時間を避けたいので、早めに向かうと事前にあの人には伝えてある。
 そういえば、昨夜の彼とのやり取りはおかしかった。

〔なんかあったら、当日は俺かディレクターのケータイ鳴らせよ。こっちからも連絡つくように、電番だけでも教えといてくれ〕

 送られたメールに書かれていた、携帯電話番号とメールアドレス。
 俺は申し訳ない気持ちで、返信をした。

〔すみません、携帯は解約して今持ってません。だから、緊急連絡は…無理かと〕

〔了解。お前が無事着かなきゃ、俺が探しに走ればいいわけだ〕

〔はい。その時は、じっとしてます〕

〔バカか、俺に見つかるよう努力しろ。背中に看板付けて来いよ。俺はまだ、お前の顔も声も知らないんだからな〕

 そうだ、俺達はまだ、お互い姿を知らない。
 なのにどうして、こんなにも姿も知らない相手が、頼もしく感じるのだろう。
 実際に姿を見たら、俺はどうなるのだろう。

「……行ってきます」

 新調した、スーツに身を包み、俺は久しく口にしていなかったその言葉と共に、玄関に鍵を掛けた。

 大丈夫だ、きっと。

 ………………………………

 いよいよ、彼に会いに行きます。
 

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