オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
『えー…皆さん、奴はなかなかに難攻不落です。久しぶりに俺、フラれてマジ凹みしました』
耳に流れ込む声は、ヘッドフォンを外せば遮断出来る。
もっと確実なのは、ラジオの電源を切ればいい。
わかっていながら、俺は頭を抱えるしか、出来なかった。
『こんなに落とせねー相手って、高校以来なんですけど』
嘆く言葉に、腕の中から目だけを上げてパソコンを見つめる。
先週の放送から、毎日のように届く出演依頼メールに、俺は判で押したように、断りメールを返し続けていた。
どれだけ情に訴えかけるメールでも、承諾出来ない自分が歯痒いし、嫌になる。
まだ文字だけなら、断るのも躊躇わないが、こうして声で訴えかけられると、俺が頑なに守っているものが、崩壊しそうだ。
会いたいと、俺だって思っている。
例え無駄にでも、俺が生きるきっかけになっている人に、直接感謝したいと思う。
「……でも、外は……」
怖い。
もう何年も、外の世界に出ていない俺には、遠すぎる。
『こうして、俺の声を聞いてくれてる全員とは、縁があって繋がってるわけですが。その糸を離すか、ずっと握ってるかは、この先俺じゃなくみんな次第なんだよな、実際』
改まった声のトーンに、俺もつい、居住まいを正した。
『赤い糸って、見たことあるか? 細いくせに頑丈で、鋏でもカッターでも切れない糸なんだと。みんなと俺を繋ぐ糸も、赤けりゃいいな』
俺と、彼の間を繋ぐ糸……それも赤い色をしてるんだろうか。
『だからさ、シマネコ。お前から切ろうとすればするほど、絡まるぞ?切れなくて。諦めて俺の手繰る糸に、身を任せなさい』
呼び掛けに、ビクリとした俺を畳み掛ける内容に、俺はギュッと目をつぶった。
『じゃないと、縄で縛るぞ。俺に、団鬼六ばりの緊縛技させる気か、お前。早いとこ落ちろ。ちゃんと受け止めるから』
超高層ビルから飛び降りる程の勇気が要るのに、彼の声が俺を手招いて背中を押す。
これはもう、絡め取られているんだろうか。
番組終了時間を前に、俺はパソコンを立ち上げた。
他力本願だけれども、彼が引く糸ならば。
外に踏み出す一歩に。
〔シマネコです。YAMATOさんから届いた糸、全身に絡めたんで思いきり引いて下さい。俺を、外に引きずり出して下さい、お願いします〕
数分後に届いたメールは、俺を完全に捕らえた。
〔サンキュ、心得た〕
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やや進展の、第三話です。
シマネコがようやく、動き出します。

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萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。