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オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。

2024年11月15日 (Fri)
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2009年08月26日 (Wed)

 ラジオDJ×引きもこもりリスナー青年第二話。

【問題】
 
 「涙のあとの笑い」で何かお願いします!

拍手[3回]




 いつもの時間、ヘッドフォンを掛け、ベッドの上で膝を抱える。
 流れて来た音楽に合わせて、あの声が聞こえて来た。

『一週間ぶりのご無沙汰。寝苦しい熱帯夜にお届けするこの美声、暑苦しさはご容赦を』

 クーラーをガンガンにかけたこの部屋は、むしろ寒いくらいだ。
 そう思っていたら、彼の口調が突然改まった。

『時期尚早かとは、思ったんだが。リスナーに一足先にお知らせしたいと。――来月いっぱいで、この番組終了することとなりました』

 心臓を、握り潰されるような痛みが走った。
 クーラーの冷気以上に、手足が冷えて行く感覚。
 勝手に震えだした身体を抱きしめ、俺は彼に必死に耳を傾けた。

『今から、バンバンさよならメッセージを送るように。あ、勢い余って婚姻届けは送るなよ』

 スタジオ内の笑いも、耳を通り過ぎる。
 普段ならば聴き終わって立ち上げるパソコンを、俺は慌てて開いた。
 キーボードを叩く指が、震えて、少しも指が進まない。
 感情がぐちゃぐちゃになりすぎて、何を伝えていいのかわからなかった。
 CMを跨いで、続々と衝撃に驚いたというメッセージが紹介されだした。
 気付けばしっかり、メールが送信されている。
 送信済みメールを確認しようとした時、彼に名前を呼ばれた。

『お、シマネコもびっくりしたか……て、おいおい。死にそうだと? 早まるなよ?』

 ――馬鹿か俺、何を送ってるんだ。
 恥ずかしさと淋しさに、涙ぐみながら、頭を抱えていたら、彼がもう一度俺の名前を呼んだ。

『死なれたら、企画倒れになるだろ~。俺に逢いたけりゃ、絶対死ぬなよ』

 え?と、思わずラジオを見つめた俺の耳に、ファンファーレが響いて来た。

『はい、皆さん俺以上に大好きなあのシマネコを、最終回までにスタジオに引っ張り出します!直接、あのシマネコに会える俺、パーソナリティの特権』

 な、何?
 突然世界が反転したような気分で、呆然とする俺に、ラジオの向こう側はわっと沸いていた。

『シマネコ、後でラブレター送るからな。逃げるなよ?リスナー連中に負けねーくらい、俺もお前にフォーリンラブだぜ』

 涙が滲む目許を拭いながら、少しだけ俺は笑った。
 引きこもりな俺が見るには、贅沢過ぎる、真夏の夜の夢。
 夢なんだと、思っていた。



 その後本当に届いた、出演交渉のメールに、俺はその日二度目の心臓停止に陥りかけた。


 ………………………………………………………………………

 少しずつ、糸が引っ張り合う予兆編…と言いますか。
 引きこもりである彼が、どうやって外に出るきっかけを作れるか、密かに悩んだ記憶があります。
 
 

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