オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
いつもの時間、ヘッドフォンを掛け、ベッドの上で膝を抱える。
流れて来た音楽に合わせて、あの声が聞こえて来た。
『一週間ぶりのご無沙汰。寝苦しい熱帯夜にお届けするこの美声、暑苦しさはご容赦を』
クーラーをガンガンにかけたこの部屋は、むしろ寒いくらいだ。
そう思っていたら、彼の口調が突然改まった。
『時期尚早かとは、思ったんだが。リスナーに一足先にお知らせしたいと。――来月いっぱいで、この番組終了することとなりました』
心臓を、握り潰されるような痛みが走った。
クーラーの冷気以上に、手足が冷えて行く感覚。
勝手に震えだした身体を抱きしめ、俺は彼に必死に耳を傾けた。
『今から、バンバンさよならメッセージを送るように。あ、勢い余って婚姻届けは送るなよ』
スタジオ内の笑いも、耳を通り過ぎる。
普段ならば聴き終わって立ち上げるパソコンを、俺は慌てて開いた。
キーボードを叩く指が、震えて、少しも指が進まない。
感情がぐちゃぐちゃになりすぎて、何を伝えていいのかわからなかった。
CMを跨いで、続々と衝撃に驚いたというメッセージが紹介されだした。
気付けばしっかり、メールが送信されている。
送信済みメールを確認しようとした時、彼に名前を呼ばれた。
『お、シマネコもびっくりしたか……て、おいおい。死にそうだと? 早まるなよ?』
――馬鹿か俺、何を送ってるんだ。
恥ずかしさと淋しさに、涙ぐみながら、頭を抱えていたら、彼がもう一度俺の名前を呼んだ。
『死なれたら、企画倒れになるだろ~。俺に逢いたけりゃ、絶対死ぬなよ』
え?と、思わずラジオを見つめた俺の耳に、ファンファーレが響いて来た。
『はい、皆さん俺以上に大好きなあのシマネコを、最終回までにスタジオに引っ張り出します!直接、あのシマネコに会える俺、パーソナリティの特権』
な、何?
突然世界が反転したような気分で、呆然とする俺に、ラジオの向こう側はわっと沸いていた。
『シマネコ、後でラブレター送るからな。逃げるなよ?リスナー連中に負けねーくらい、俺もお前にフォーリンラブだぜ』
涙が滲む目許を拭いながら、少しだけ俺は笑った。
引きこもりな俺が見るには、贅沢過ぎる、真夏の夜の夢。
夢なんだと、思っていた。
その後本当に届いた、出演交渉のメールに、俺はその日二度目の心臓停止に陥りかけた。
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少しずつ、糸が引っ張り合う予兆編…と言いますか。
引きこもりである彼が、どうやって外に出るきっかけを作れるか、密かに悩んだ記憶があります。
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好きな系統は、
【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。