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オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。

2024年11月15日 (Fri)
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2009年07月28日 (Tue)

 その2です。キャラ名は今回から登場します。
 傾向:いじめっこ×いじめられっこ : 三角関係

拍手[1回]



 誰も、いない。
 芦名泉は、殺していた息をゆっくり、吐き出した。
 放課後、日課になっている『彼ら』への『奉仕』。その為に通う、今は使われていないプレハブの生徒会室の中を伺い、泉は薄暗い室内に歩を進めた。
 重い溜息と共に、声に出さず泉は呟く。

(…なんで俺が…)

 入学した頃は、普通に周囲に溶け込んでいた。豹変したのは、5月の連休が明けた頃。
 理由もわからず、突然世界が一変した。

「あっれ~、泉ちゃんまだ来てねぇ?」

 びくりと、泉は身を竦めた。
 室内に入って来た彼らの死角であるソファーの陰にいたために、気付かれていないようだ。
 先頭で入って来たのは、プールに自分を突き落とした木村だった。
 泉の身体は、自然に震え出す。早く出なければ、と思いながらも、身体が動かない。
 まだ、汚れた水を飲み込み、意識が遠退いた感覚は、生々しく残っている。

「昨夜あんな目に遭って、逃げたんじゃねーの? 殺されかけたんだからな」

 割り込んだリーダー格樋渡の声に、泉はふと安堵した自分に気付いた。

「……は? 普通にガッコ来てたろ」
「アレ、幽霊だったりしてな。俺ら以外には見えてねーの」

 冗談めかして言い放った樋渡に、木村は反論出来ないようだ。
 そう、誰も確かめに来なかった。
 プールサイドで目覚めた時、傍に居たのは、自分と同じようにずぶ濡れの樋渡一人だけだった。
 互いの冷たい身体を擦り合わせるように、抱きしめられていた感覚が蘇る

「ちっ、泉ちゃんいねーなら帰るわ。おめーらも付き合え」

 複数の足音とざわめきが、遠ざかって行く。
 泉は改めて、緊張の糸を解いた。

「やっぱ、俺にしか見えてねーのか。あいつら気付かねぇって」

 頭上から降って来た声に、泉は大きく振り仰いだ。
 腕組みをし、自分を見下ろす眼差しに、泉の鼓動が跳ね上がる。

「よう、幽霊」
「生き……てる、俺は生きてるよ!」
「どうだかな、昨日は死体みてぇに冷たかった」

 屈んだ樋渡が、手を伸ばしてくる。泉は条件反射で、身体を強張らせた。
 一瞬、樋渡の眼が軽く細められる。

「触れる幽霊って、いるんだな」
「幽霊じゃな……っ」

 ゆっくりと、樋渡の指が頬を撫で、唇に触れた。

「感謝しろよ?俺が人口呼吸してやったんだからな」

 唇を撫でる指の感触に、泉は思わず瞼を閉じた。
 その直後、指ではない温かい感触が、唇に触れる。

「え……?」
「生存確認終了」

 振り返る事なく、樋渡は部屋を出ていく。
 ――今の、何?
 泉は、自分の唇に触れしばらく動けなかった。


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 最初に掲載した分に大幅加筆修正をしてます。



 

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