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オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。

2024年11月15日 (Fri)
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2009年07月28日 (Tue)

 その4。「3」の木村視点。

拍手[3回]



 「木村~、部屋空いた……て、誰からか連絡?」

 携帯を開いていたところで声を掛けられ、木村はひらひらと手を振り返した。

「いんや」

 騒がしいカラオケ店の待合ロビーに向かい、派手に染めた髪をかきあげ舌打ちを零した。
 しつこく来ていたメールは、つるんでいるグループのリーダーからだ。
 玩具として弄んでいる、男子生徒の行方を尋ねる内容に、薄笑いを浮かべる。

(誰が教えるかよ)

 恐らく、一人で何時間も祭の行われている神社の鳥居前で、待ちぼうけをしているだろう人物を思い、仲間の元に向かいかけた足を止めた。
 そろそろ、いいだろうか。
 最初から、誤った待ち合わせ時間を伝え、一人放置しておきながら、木村は折りを見て迎えに行くつもりだった。
 彼が安堵する顔を、想像すると胸が騒ぐ。

「わり、俺急用出来た」

 仲間に断り、木村は足早に店を飛び出した。
 携帯を取り出し、メール攻撃のリーダーに発信したのは、居所を把握している優越感からだった。

「よぉ、泉ちゃん見つかったか?」
『いや、だが見当はついた。お前こそどこに消えてんだ』
「俺? 泉ちゃんを掠いに、カラオケ止めて出動中」

 おどけて返しながらも、内心樋渡の勘の良さに舌を巻く。

 最初に、芦名泉をターゲットに選んだのは自分だった。
 大して乗り気でない顔をして、興味の無いそぶりで、一本引いて泉に関わっていたくせに。
 プールに泉を突き落としたあの夜から、二人の空気が変わった気がする。
 それが、腹立たしい。

「なー樋渡、抜け駆けは無しに行こうぜ?」
『なんの話だよ』
「泉ちゃん、独占してんじゃねーよ」

 自然と低くなった声に、相手が鼻で笑い飛ばすのが聞こえた。

「おい!」
『お前こそ、下手な小細工してんな。抜け駆け?お前が手を離すから、俺が掴んだだけだ』
「誰が……!」
『もう切るぞ、――見つけた』

 一方的に切られた通話に、木村は思いきり悪態をつき携帯を地面に投げ付けた。
 最初に見つけたのは、自分のはずなのに。
 捕らえたのは、自分だったはずなのに。
 手元を擦り抜けた存在に、木村は片手で顔を覆った。
 自分に縋るように仕向けるはずだった、今夜も。

「……クソッ!」

 泉が、自分の姿に綻ぶ笑顔を見せる瞬間が、見たかった。
 木村は、方向を変え神社とは逆に駆け出した。

-------------

 あて馬大好き。
 木村も頑張れば、どうにか奪還の機会があったりなかったり…かと。

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