オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
「木村~、部屋空いた……て、誰からか連絡?」
携帯を開いていたところで声を掛けられ、木村はひらひらと手を振り返した。
「いんや」
騒がしいカラオケ店の待合ロビーに向かい、派手に染めた髪をかきあげ舌打ちを零した。
しつこく来ていたメールは、つるんでいるグループのリーダーからだ。
玩具として弄んでいる、男子生徒の行方を尋ねる内容に、薄笑いを浮かべる。
(誰が教えるかよ)
恐らく、一人で何時間も祭の行われている神社の鳥居前で、待ちぼうけをしているだろう人物を思い、仲間の元に向かいかけた足を止めた。
そろそろ、いいだろうか。
最初から、誤った待ち合わせ時間を伝え、一人放置しておきながら、木村は折りを見て迎えに行くつもりだった。
彼が安堵する顔を、想像すると胸が騒ぐ。
「わり、俺急用出来た」
仲間に断り、木村は足早に店を飛び出した。
携帯を取り出し、メール攻撃のリーダーに発信したのは、居所を把握している優越感からだった。
「よぉ、泉ちゃん見つかったか?」
『いや、だが見当はついた。お前こそどこに消えてんだ』
「俺? 泉ちゃんを掠いに、カラオケ止めて出動中」
おどけて返しながらも、内心樋渡の勘の良さに舌を巻く。
最初に、芦名泉をターゲットに選んだのは自分だった。
大して乗り気でない顔をして、興味の無いそぶりで、一本引いて泉に関わっていたくせに。
プールに泉を突き落としたあの夜から、二人の空気が変わった気がする。
それが、腹立たしい。
「なー樋渡、抜け駆けは無しに行こうぜ?」
『なんの話だよ』
「泉ちゃん、独占してんじゃねーよ」
自然と低くなった声に、相手が鼻で笑い飛ばすのが聞こえた。
「おい!」
『お前こそ、下手な小細工してんな。抜け駆け?お前が手を離すから、俺が掴んだだけだ』
「誰が……!」
『もう切るぞ、――見つけた』
一方的に切られた通話に、木村は思いきり悪態をつき携帯を地面に投げ付けた。
最初に見つけたのは、自分のはずなのに。
捕らえたのは、自分だったはずなのに。
手元を擦り抜けた存在に、木村は片手で顔を覆った。
自分に縋るように仕向けるはずだった、今夜も。
「……クソッ!」
泉が、自分の姿に綻ぶ笑顔を見せる瞬間が、見たかった。
木村は、方向を変え神社とは逆に駆け出した。
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あて馬大好き。
木村も頑張れば、どうにか奪還の機会があったりなかったり…かと。
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好きな系統は、
【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。