オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
それは、洗濯機にほうり込むワイシャツの胸ポケットから飛び出した。
ピンク色の光沢ある台紙に、丸みを帯びたフォントで、
『あい いつでもTELLしてね』
と、携帯番号とメールアドレスが印刷されている。
「ふーん、ウチの旦那サマもやるじゃねーの」
祐司は拾いあげた名刺を、エプロンのポケットへしまい、いつもより豪快に粉石鹸を洗濯機にほうり投げた。
***
「なんだ、これは」
「ワイシャツの胸ポケットから出て来たから、大事なモンなんじゃねーの?」
帰宅した賢の前へ、ピンクの名刺を突き付ける。
しかし当の本人は、訝るばかりで名刺に触れようともしない。
「大方、部長あたりが冗談で俺のシャツに忍ばせたんだろ」
「てか、そーいう店行ったとか聞いてねーし!」
「付き合いだ、だれが好きこのんでケバい女だらけの店に出向くか」
呆れ顔で溜息をつく賢に、しかし祐司はまだ眉間を寄せ険しい表情だ。
面倒な事になったな、と思う反面、祐司のあからさまな嫉妬が心地いい。
言いくるめのも、宥めるのも、賢にはさして難しい事ではない。
だからこそ、悔しげに唇を噛み締める祐司の滅多に見られない表情を、楽しみたかった。
「……何笑ってんだよ」
「いや。久しぶりにお前が、本気で怒ってるなと思っただけだ」
「だから、なんでそれで笑うんだよ!」
「嬉しいから、だ」
テーブル脇に立つ祐司の腕を引き寄せ、自分の膝の上へ座らせる。
苦笑混じりの賢に、祐司はますます目尻を吊り上げた。
「怒るな、クセになるぞ」
眉間を指先で叩き、凝り固まった筋肉を解すように撫でる。
まだ、憮然としている裕司の額に、賢は自分の額を押し当てた。
「あんな香水臭い女より、俺は柔軟剤や食器洗剤が染み込んだお前の方が、何倍も興奮する」
「変態」
「選んだのは、お前も同罪だろう? 祐司」
「じゃあ、もうそーいう店行かないか?」
「お前は、俺が出世しない方がいいのか」
「俺ムカつかせてまで、お前こそ出世してーのかよ!」
祐司の切り返しに、賢は思わす眼を見張った。
「……そうだな、悪かった」
「その名刺の女に電話とかしたら、お姉さん家に泣きながら行くからな。賢が水商売の女と浮気したっつって」
「ものすごい抑止力だな、それは」
珍しく一本取られたと思いつつ、賢の頭の中はすでにどうやって機嫌をとるか、それ一色に染まろうとしていた。
「お前の夢の為の資金が貯まるまでは、少し我慢してくれ。モテる旦那様で、鼻が高いだろう?」
「……うっさい、ばか」
今夜は完全に主導権を握られるな。
賢は苦笑しつつも、祐司の紅くなった頬に一つキスを落とした。
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賢が何と言って、会社にこの生活の事を話しているのか、とかはそのうち明かしたいと思います。
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【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。