オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
爽やかな風が吹く、小高い山の中腹に、幼なじみの眠る墓はある。
手土産は、いつも同じ。
あいつの好きだった日本酒と、チョコレート。
大概、酒好きは辛党だという常識を覆し、あいつはチョコレートを肴に酒が飲める男だった。
「誕生日おめでとう、夏紀」
カップ酒を開け、墓に向かい掲げる。
俺はそれに、一口くちをつけた。
「俺達、間もなく30だぞ。……あいつも」
10年来の付き合いの俺より、大学で出会った友人と兄弟のように仲が良くなった夏紀は、俺にその友人の話をしつこく繰り返した。
あの頃はまさか、その相手と――男と、籍を入れることになるとは、思ってもいなかったが。
「夏紀の勘は、正しかったな」
正反対の性格の男は、逆に興味を引いた。
そして、――夏紀の消失を機に関係が一変した。
あいつ……祐司は、まるで夏紀が迎えに来てるかのように、日に日にやつれ衰えていった。
俺は、二人も友人を無くしたくないがために、ただ必死に生に執着させるために、祐司を抱いた。
関係を、強要し続けた。
今考えれば、それすらも夏紀の計画だったのではと、疑いたくなる。
それは多分、きっと、俺達が幸せに暮らしているからだろう。
幸福な、結果論。
「祐司から伝言だ。たまには新婚家庭を冷やかしに、化けて出て来いと」
夏紀ならば、間違いなく俺達は喜んで迎え入れる。
会えるのならば、本当にもう一度会いたい。
「……お前なら、俺達が爺になってそっちに行っても、すぐに見分けがつくよな?」
お前の歳を、どんどん越して行くけれど。
俺達は、ずっとお前を大事な友人だと思っている。
いつかまた、三人で、向こうで酒を飲もう。
「だから、あんまり早く迎えに来るなよ」
まるで、返事のように、風が木々の葉を揺らした。
夏紀、お前に聞かせる惚気は山ほどあるからな。
楽しみに、覚悟してろよ。
そして、思い切り祝福してくれ。
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賢と夏紀君、そして祐司の話は、もう少し練って書きたいと思っています。
今の新婚バカップルになるまでの二人の方が、私には本編だったり。
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好きな系統は、
【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。