オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
――最悪だ。
「うわ! 止まっ、落ちっ、死ぬぅー!」
「落ちませんし、死にませんよ」
社長の息子ってだけで、超難関の入社試験をパスし。
頭も悪けりゃ、仕事も出来ないくせに、主任の肩書。
何一つ自己解決出来ない馬鹿の尻拭いのために、俺は頑張って勉強して入社したワケではない。
「増谷っ、絶対落ちないか?」
「さぁ。それはメンテナンス会社に聞かないと」
「増谷ィー!」
煩い。
大学時代から、こうだった。腹が立つ。
「大丈夫ですよ、受付で入館証明が取れてるはずだから、閉じ込められてるのが若梅物産の社長子息と知ればすぐ助けが来ます」
「増……」
「狭いし、空気も限られてますから、落ち着いて下さい」
苛々を抑え、至極冷静な声を出せば、馬鹿息子は子供のようにこくんと頷いた。
膝を立てて壁にもたれて座っていた俺の前に、奴はぺたりと座り込んだ。
「増谷」
「なんですか」
「も、もしも、このまま、死んだら……さ」
「だから、死にません」
「わかんないだろ! 俺、後悔したくないから、今思い切って本音言う!」
どうせくだらない事だろ、――俺が嫌いだとか。
「お、……俺は、増谷が……大っ嫌いだ!」
ほら。
しかし反射的に、喉元にせり上がって来た何かを、飲み込む。
「いつも意地悪だし、全然俺に優しくないし! 大嫌いだ!」
「気が合いますね、……俺もアンタが大嫌いだよ」
俺も重い残す事の無いよう、この機会に言わせて貰おう。最後の瞬間がこいつと一緒だなんて、浮かばれない。
自然と低くなった声に、奴の肩が跳ねた。
泣き出しそうな顔で、俺の顔を見つめて来る。
「き……嫌、い?」
「嫌いだ。馬鹿だしガキだし、迷惑ばかりかける」
「じゃ……じゃあ、それ直したら……俺のこと、好きになるのか?」
ぐずぐずと鼻を鳴らし、この馬鹿は何を言い出すんだ。
「直せると? あんたが?」
「助かったら、直す」
「そんなに俺に、好かれたい?」
小さく頷いた奴が、俺を恐る恐る窺うように見上げて来た。
泣き腫らした顔は、とても成人男性には見えない。
甘え切った態度以上に、勝手に泣いて俺を悪者に仕立てようとしている態度が、更に気に入らない。
――第一、これに好かれてどうするんだ、俺は。
「……俺、エッチの下手くそな奴も嫌いなんですが」
最後の一線。俺の矜持。
言外に無駄だと言う意味で呟いた俺に、奴は顔を真っ赤に染めた。
「それは……がんばるっ」
何をだ、とは最早突っ込む気にもならない。
むしろ、この場で突っ込んだら理解するのか。
「どうやって」
「え……あ……お、教えて、下さい」
初めて頭を下げた奴に、思わずほくそ笑んだ。
教えて下さい。つまり、主導権は、俺にあるわけだ。
これは、いい。馬鹿に躾をする。
俺好みに、俺に逆らわないように躾ける。
不思議と、気分が昂揚した。
「わかりました、覚悟して下さいね」
「ん……。あ、でも」
「なんですか、死ぬ前にキスでもしておきたいとか?」
「……っ!」
腕時計を見る。
恐らくまだ、復旧はしないだろう。
――キスを仕込むくらいの時間は、ありそうだ。
………………………………
下克上なのか、どうなのか。
ちょっとお馬鹿な上司、ハタ迷惑人間というのが大好きです。
書いてから気付きましたが、先輩×後輩だったんですよね(笑)
部下が年上です、そういう事でよろしくお願いします<(_ _)>
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好きな系統は、
【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。