オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
「本気で最初はさぁ、祭でもやってんのかと思った」
「あははは!」
「笑うなよっ」
バイト先の同僚は、地方出身の奴だ。
生まれも育ちも23区内な俺を、常に憧れの眼差しで見て来る。
「電車も長いしさぁ、いっぱい来るし」
「長いって、普通だろ」
「2・3両の電車しかこっちは、見た事なかったんだっつの! おまけに開閉手動だし」
「ハイハイ。で、一年暮らしてどーよ? 慣れた?」
「……慣れた!」
「へぇ」
別に地方から来た連中がみんな、純朴だとは思ってないが。
コイツの素直な反応とか見てると、つい可愛いなーと思ってしまう。
「で、今日待ち合わせに遅れた理由は?」
「お、遅れてねーよ! おまえが大体、親切に出口教えてくれたらっ」
「昨日メールしたろが。おまえ、わかったって返信して来たろ」
「うっ……」
一年住んでか、最近一丁前ぶりやがるんで、ちょっとだけ意地悪をした。
ナビも何にも使わないで来いと追い込み、初めて使う路線の駅で、待ち合わせに1番近い出口を教えてやらなかった。
「ごめんな、待った?」
「まぁ、ライブにはまだ時間あるし。そんな待ってなかったし、晩飯奢るなら許す」
「なんだよ、それ! ……でも、わかった」
素直に要求呑む姿に、ほくそ笑む。
それに、俺に嫌われまいと必死な態度。
可愛いっつーか、本気でどこまで俺信じてるのか試したくなる。
「なぁ」
「ん?」
「前から言ってたろ。明日も休みだし、東京タワー昇らない?」
「行く! 行きたい!」
地元の人間、滅多に行かないんだとつい漏らしてから、ピタリと行きたいと俺の前で言わなくなったコイツ。
やっぱり飴と鞭は、使い分けないとな。
俺が嫌われたら、元も子もない。
「てか、一年居て他の奴と誰ともタワー行かなかったのか?」
「行ってない! 初めてはおまえと行きたいと思って、我慢してた!」
「へ?」
思わず間抜けな声を出した俺に、奴は首を傾げた。
あー……なんか今、すっげー俺、恥ずかしいんですが。
奴もじわじわ、顔が紅くなって来た。
「じゃあ、一年分の我慢晴らすのに付き合ってやるかぁ」
「そ、そうだ! あと、また迷うと大変だから、迎えに来いよ!」
「エラソー」
「うっせぇ」
あーあ。
行き先ライブハウスじゃなくて、おまえん家に変更したい。
なんか今、無性におまえ抱きしめたいよ。
………………………………
どうして地下鉄の出口が、あんなにたくさんあるのか。
池袋駅から外(東口)になかなか出られなかった、智祢です。
久々に投下した際、可愛らしさだけ狙ってみたお話でした。
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好きな系統は、
【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。