オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
……大丈夫、名前がある。
新聞の入った籠を抱えた手に、力が篭る。
通称無菌室と呼ばれるその部屋は、医者・看護師以外では家族しか立ち入れない。
その前を通り過ぎ、僕は隣の大部屋に元気よく入った。
「おはようございます!売店です!新聞お持ちしました~」
***
僕は、病院売店内の病棟配達担当だ。
高齢者や抗がん剤治療で、体力的に売店まで降りられない人に代わり、病室まで注文を受けた商品を届ける。
看護師さん達も忙しく、買い物まで手が回らないから、かなり重宝されていた。
「売店さん」
午前中の配達が一段落したところで、自然と向いてしまった足は、無菌室の前だった。
立ち止まっていた僕に、顔なじみの看護師さんが声を掛けてくる。
「……どうですか、彼」
「微熱続きでね、ちょっと体力落ちてるかな。でも、移植に備えて頑張ってますよ」
「そっか」
よっぽど僕が酷い顔をしていたのか、看護師さんは剥げますように笑いかけてくれた。
「売店さんに、絶対焼肉弁当頼むんだって、口癖」
「……弁当は配達禁止だっての」
苦笑した看護師さんに俺も笑い返し、その場を後にする。
閉ざされた扉の向こうにいるのは、まだ二十歳になったばかりの青年だ。
圧倒的に高齢者が多い入院病棟内で、ずば抜けて彼は若かった。
兄のように慕ってくれた彼とは、バイクの趣味も合い話しが盛り上がった。
本来禁止されてるが、個人的に連絡先も交換して、彼が母親に頼みづらい雑誌なんかもこっそり差し入れもした。
「……ちゃんと、出て来いよ」
非常階段にしゃがみ込み、僕は呟いた。
彼から来た、全部保存をかけたメールの入った携帯を握り締める。
彼の前に、あの部屋へ入った患者さんは…移植まで間に合わなかった。
でも、無事手術を終えて、退院した人も知っている。
「海も山も、まだ一緒に行ってないんだからな」
一人の患者さんに肩入れしちゃいけないのは、僕らも同じだ。
そう思いながらも、彼の屈託のない笑顔には逆らえなかった。
どうか明日も、名前がありますように。
毎日そう祈りながら、僕は今日も、笑顔で病室を回る。
君にも早く、この声を届けたいよ。
…………………
実は一時期院内配達という仕事を、私してました。
顔なじみになった患者さんが、亡くなる現実は結構きつかったです。
フィクションですが、モデル…というにはあれですが、若い女の子と仲良くなったことがありました。
まだ二十歳になったばかりの子で、どうしても限定版の某アイドルのCDがほしいというので、代理購入して届けたことがあります(もちろん業務外)
そんなことを思い出しながら書いた記憶があります。
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萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。
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