オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
「んな顔すんな、すぐ戻る」
どんな顔だよ、と悪態つきたかったが、噛まされた猿轡に邪魔され声が出ない。
唸る俺に肩を竦め、奴は部屋を出て行った。
埃の積もった、廃工場内の事務所。
正確な場所はわからないが、俺の住む町からはかなり離れてるはずだ。
1ヶ月前まで、俺はしがないコンビニバイトだった。
あの日も、普通に夜勤してただけだ。
そこに、奴さえ来なければ……俺はきっと、今も普通にレジしてた。
(クソ野郎)
レジの売上4万と、俺を盾にして奴は逃げた。
わけが分からずパニクる俺に追い打ちかけるように、奴は逃げ込んだ山の中で、車を停めて俺を襲った。
……男のプライドを、最も踏みにじる方法で。
しっかりウチの店で、金と一緒にコンドームを盗んでたあいつが憎い。
それからは、あいつが溜まると手を出される始末だ。……畜生。
(帰ってくんな、ハゲ)
何が海老蔵目指した坊主頭だ、タコ。
あっさり、買い出し途中で捕まれ。
毎回そう念じてるのに、あいつはいつも期待を裏切って帰って来る。
帰って来たあいつに、俺も不思議と安堵する。
目的は飯だと言い聞かせ、空腹に耐え兼ねてたフリをする。
……どうしようもない、俺達なんだ。
* * *
「寝てたのか」
大分日が傾いた頃、奴の声が耳元で聞こえて俺はぼんやり目を開けた。
机の上には、俺が働いてたのとは別の系列のコンビニ袋が乗っていた。
「飯にしようぜ」
「……ンッ!」
「食わせてやるって、いつもやってんだろ」
猿轡だけ外され、手足の拘束は解かれないまま俺は奴を睨みつけた。
薄く笑う奴は、余裕の態度でサンドイッチ片手に近づいて来る。
「ほら、おまえの好きなツナマヨ。機嫌直せよ、そんなに昨日いじめたの根に持ってんのか?」
「な……っ、ちげーよ!」
「だったら今夜は、優しく抱いてやるから」
「断固拒否! だ、大体おまえ、すぐ戻るって言ったくせになんだよ! 何時間俺を……」
――放っといてんだよ、と言いかけて俺は言葉を飲み込んだ。
阿呆か俺、何言ってんだ。
奴も一瞬呆気に取られたみたいだが、すぐにニヤニヤと薄笑いを浮かべだした。
「悪かった、もうおまえを一人にしないよハニー」
「きしょい!」
「今夜はそういう設定でヤるか」
設定とかなんだよ! なんだその、ちょっと嬉しそうな面は!
……でも、今夜はまだ警察が来なければいいと思う俺も、きっと同罪だ。
……………………………………
俗に言う、ストックホルム症候群…のような。
BL的展開でよくある、無理矢理→ラブラブといものの大半は、現実的には有り得ないと思う派なんですが(笑)
あまり野暮は申しませんが。
状況によっては、有り得るかもしれない。
そう、思いこみたいかもしれない。
なんて言うのを考えながら、書いた記憶があります。
萌えじゃないところに重点置いて考えて、すみませんというお話でした。
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好きな系統は、
【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。