オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
それは本当に、唐突だった。
埃まみれの汚い廃工場で、明日もこのタコ野郎と顔付き合わせてんだろうなと思ってた生活は、あっさり終わった。
本当に、あっさりと。
* * *
「1ヶ月監禁されてて、混乱しているのはわかるんだが……ねぇ」
困ったように頭を掻くオッサンに、俺は失望感いっぱいの溜息をついた。
この人も話にならない。
前に来た若い刑事は、もっと駄目だったが。
「でも俺……五体満足だし、飯もちゃんと貰ってたし。夜は……くっついて寝てたから、寒くなかったし。だから、あいつそんな悪い奴じゃないよ」
「だから、それはだねぇ」
「刑事さん、今日はそこまでにしませんか。もう少し落ち着いてから、聴取をお願いします」
「先生……わかりました、失礼しますよ」
眼鏡の優男風の医者に頭を下げ、オッサンは出て行った。
あいつの事聞き忘れたと、今更思い出す。
先生はカーテンを締めると、俺にゆっくり振り返った。
「志藤君」
「はい」
「彼は素直に取り調べに応じているよ、そして君に暴行を働いたと告白してる」
――暴行?
ピンと来ない。
一番最初の、車の中のアレ?
確かにあれは痛かった、すげー痛かった。
けど、工場に寝泊まりしてからは……意地悪はされたが、暴力は振るわれなかった。
ムカついたりはしたけど、怖くは無かった。
何度も刑事さんにそう言ったのに、あいつらは取り合ってくれない。
「……先生、あいつどうなるの?」
「法律的な難しい話はわからないけど、恐らく実刑は免れないだろうね。刑務所に入るんじゃないかな」
「刑務所……」
呟いた言葉に、胸がキリキリと締め付けられる。
あの日、警察が踏み込んで来て、『保護』されてから。
一度もあいつに会ってない、会わせて貰えない。
「……あいつ、いつもすぐ戻るって、買い出し行ってた」
「そう」
「俺のすぐと、あいつのすぐが感覚違くて、毎回俺が怒って」
「志藤君」
「刑務所なんかも、あいつすぐ戻って来れるんでしょ!?」
投げかけた俺の言葉に、先生が痛みを堪えるみたいな顔をする。
わからない。
だって、痛いのは俺なのに。
あいつに会えなくて、帰って来なくて。
身体じゃない、心が痛いのは俺なのに。
俺に会う人達は、みんな俺を見て痛そうな顔をする。
あー……馬鹿、俺の馬鹿。
なんで、あんな奴のためにこんなボロボロ泣いてんだよ。
なんで全然、清々しないんだよ。
『んな顔すんなよ、すぐに戻る』
あいつが傍にいたなら、絶対そう言う。
で、俺の泣き顔馬鹿にするんだ。
ちょっとニヤついてから。
「すぐって、いつだよ……っ! クソバカ野郎!」
1ヶ月も一緒にいたのに、名前も歳も知らなかったあいつに、俺は無性に会いたかった。
* * *
身体的に問題が特に無いと判断された俺は、退院後それまで勤めていたコンビニに戻った。
変わらない日常。
そこに増えたのは、先生の紹介で会うようになった別の、カウンセリングの先生くらいだ。
あいつがどうなったのかは、新聞にも雑誌にも大した記事にならなかった。
警察も、教えてくれない。
そんな愚痴を、カウンセリングの先生に話に行く。
「まだ、あいつから連絡ないってどんだけ薄情だって話だよね」
「そうだなぁ、案外忙しいんじゃないかな。塀の中も」
「そうなの?」
「さあ? 僕は入った事がないから」
犀川先生という、カウンセリングの先生は、待つのは悪くないと言ってくれた。
待ってる人がいる方が、あいつも頑張れるだろうって。
でも、俺が待ってる事を伝えられないと言ったら、手紙を書けばいいと教えてくれた。
「名前もわからないのに、手紙だせないじゃん」
「そうだね」
「でも書くの?」
「僕にぶつけるよりかは、いいと思うよ」
それはそうだ。
あいつには言いたい事が、山ほどある。
毎日溜まってるんだ、あいつに話したい事。
そんな俺に、味気ないまっ白い封筒が届いたのは――その数日後のことだった。
やっとわかった名前は、全然エビそうでもなきゃカッコ良くも無くて、噴出した。
噴出した拍子に、涙が出たから、それも書いて伝えよう。
先生は、男なら責任取れって言えば大概、会いに来るって言っていた。
『早く帰れバカ、飯もノド通らないだろ! 餓死したら恨むからな、責任取れ! すぐ帰れ!』
…………………………
後半部分付けたしで、纏めてみました。
なんか…若干可哀想な子になってる気がしないでもないのですが。
向こうが実際どんなリアクションを取るのか、責任取りに来るのかは…ご想像にお任せしますということで(逃)
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【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。