飛び越えられる、距離。

　ギリギリまで粘って、ようやく飛び越えて行ける距離。

【問題】
　｢こっちにおいで｣
　で萌える話をお願いします！

『こっちにおいで』

　朝一番に届いたメールがそれって、もうバカかアホかと。
　行けるなら行っとるわ！
　お前、どんだけ俺の鉄の意思折り曲げるんじゃ！
　お前んとこに、なりふり構わず駆けて行けるほど、若くねーんだよ！
　ガキじゃねぇんだ！

　……くそ、不覚だ。夜中酔っ払って、泣き言たっぷりの長文メール送ったなんて。
　柄じゃねーとか、キャラじゃねぇどころの騒ぎじゃないっつの。
　おまけに、深夜2時3時だっつーのに、返信来ないってメソメソして、だ。
　冷静に考えたら、来るワケがない。
　あいつの生活リズム上、そんな時間にメール返信なんて有り得ない。
　あぁぁぁぁ。今なら、額で目玉焼き焼ける、マジ焼ける。
　……落ち着け、落ち着け俺。

　泣き言メールを苦々しい思いで読み返しながら、たった一言だけ返って来たあいつのメールをまた読む。
　なんでだ、なんかムカムカしてきた。
　普通に不親切だろ、この内容。普通は、落ち込む遠距離恋愛の恋人、もっと励ますだろ。
　なんだこの、たった一言って。
　読んでねーのか、あいつ。
　それ有り得るな、超やりそうだあいつ。
　そう考えたら、超ムカついた。

「行けばいんだろ」

　直接言ってやる、恨みつらみ。
　そんで、直接ぎゅってされて慰められてやる。


　　＊＊＊


　心の栄養補給のため、有休寄越せと上司に電話して。
　上司がなんか喚いてたのは、この際気にしない。
　駅へ、タクシーで急ぐ。
　あいつに宛てて、行くから待ってろメールを、いつ送るか。
　そのタイミングを考えながら、俺は新幹線に乗り込んだ。
　メール来てから、約6時間。
　
「通信速度じゃ、やっぱ愛の距離は縮まらんな」

　首洗って、待ってろよ。
　お前のごまかしくさい慰めなんか利かんくらい、わんわん泣いてやるからな。








　……………………

　なぜか、このお題を見てからF山ましゃ兄の歌声が頭の中リフレイン。
　まぁ、曲とは全く関係ない仕上がりなんですが。
　手の届く距離でいう「こっちにおいで」より、大人にはもっと距離やら時間があるよなー的な。
　そんなイメージで書きました。

　

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