害虫駆除！

　ズレた会話に滲む本音。虫よけ候補にはいつでもなるのに。

【問題】
　『虫さされ』で妄想お願いします

「ゆうべは、お楽しみだったのか？」

　眉一つ動かさず真顔で、冗談を言わない上司が朝一番にそう言って来た。
　自社ビルの、エレベーターの前で。
　熱帯夜の寝苦しさで熟睡出来ず、つい朝寝過ごした俺は、シャワーを浴び鏡もろくに見ないで慌ただしく飛び出して来た。
　上司の意図するところがわからず、首を傾げる俺に、上司が不快あらわに眉をしかめた。

「ここと、ここ。気付いてないのか？」

　自分の首筋を指差す上司を見つめ、ようやく俺は合点がいった。

「蚊ですよ、蚊。昨夜暑かったじゃないですか、窓開けて寝たんで」
「本当に蚊か？」
「……なんでそんなに、食いつくんですか」
「まだ俺は、食らいついてない」
「いや、十分絡んで来てますよ」
「こんなところで、絡むのが好きなのか」

　……真顔で問い詰める上司が、怖い。
　この人、洒落や冗談言わない上に、四角四面の厳格な人で、せっかくの男前な顔が逆効果な人だ。
　ついでに、なんか会話が噛み合ってない気がするが、気のせいだろうか。

「あの、課長？」
「虫よけならば、俺が買って出る」
「蚊取り線香やベープ買うくらいは、財ありますよ」
「世の中には、そんなものじゃ払えない虫もいる」
「網戸も張替えるから、心配いらないですって」
「……君は、本当に危機管理能力が低いな」
「課長は心配しすぎです」

　段々、怒りを滲ませる上司に肩を竦める。
　この人は、本当に部下思いなんだな、と感心しながら。









　………………………

　気付けよ！っつう（笑）
　課長多分、網戸の張り替えとかやりに行くんだろうなぁ。

　
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