オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
会社の金を、横領した。
最初は軽く、領収書を少し改ざんし、上前をハネる。
次はお客から預かった金額を、少しだけ操作して。
毎日見ている帳簿と、諭吉の顔が、段々頭に染み込んで。
俺の金だと、勘違いした。
「出ろ、面会だ」
のろのろと立ち上がり、連れられるまま向かった先には、直属の上司が待っていた。
定期的に面会に来る、唯一の身内だ。
「どうだ、体調は。少し窶れたんじゃないか」
「……平気です、麦飯も美味いし」
捕まるのが怖くて、よりも。あの金を取り上げられたくなくて、逃げ出した。
地元から、縁も頼りも無い関西に逃げた。
大好きだと、言ってくれた人と一緒に。
半年過ぎた頃、この人が迎えに来た。
「顧客への対応は、順調に進んでる。問題は無いから、安心しろ」
「……はい」
「すっかり牙の抜けた狼だな、もともとおまえは、あまり肉食系ではなかったが」
苦笑する上司につられ、俺も曖昧な笑みを返した。
この人が俺を見つけた時、俺は名前も知らないオッサンに抱かれてる真っ最中だった。
金は湯水のように、出て来ない。
会社からの一千万近い金だって、彼氏と二人で遊んで暮らせばすぐに消えた。
俺はそれが幸せなんだと、思っていた。
二人だけの世界はでも、諭吉が少なくなった時点で崩壊していたんだ。
「……あいつ、どうしてます?」
「気に掛けるな、あの男のことは」
「すみません」
悲しいとか、虚しいとか考える間も無く、俺はあいつを繋ぎ止めたくて、諭吉を手に入れたくて、出来る事をした。
会社の金も、知らないオッサンから貰う金も、あいつを繋ぎ留めるための、紙縒りみたいなものだった。
「……時々、寝てると夢で聞こえるんです。あいつの声で、ヒィヒィ言わせてやる、って。俺は全裸で、真っ暗な部屋で身動き取れなくて」
「宮永君」
「俺、変ですか?気持ち悪いですか?」
「……だったら、ここまでおまえに会い来ると思うか?」
「部長、暇なのかなって」
俺も、あいつも泣くことすらしなかったのに。
この人だけは、ボロ切れみたいな俺を抱きしめて、泣いてくれた。
「出たら、部長をヒィヒィ言わせますね。俺、かなり上手いんで」
「期待してるよ」
いつもそう、嬉しくなさそうに応えて、あの人は帰って行く。
今夜くらいせめて、あの人の夢ならいいのに。
最近は、そんな風に思うようになっていた。
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雰囲気重視で…と投稿時コメント付けたのですが。
地元の○A(N協)や、県の機関なんかで相次いで横領のニュースを見て思いついたお話でした。
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萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。
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