オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
すっかり帰りが遅くなった。
生徒会の仕事が終わらなかった上、先生が生徒会室の鍵を無くしたと言い出して、大捜索。
で、昇降口を出たら空に星が輝いていた。
「おにーさん」
暗がりの校門から、顔の見えない人間が話かけてきて、情けなくも尻餅をついてしまった。
「ちょ、驚き過ぎ。俺だよ、兄貴」
「お前……タカっ! 何してんだ、こんな時間に!」
「こっちの台詞だっつの、母ちゃんカンカンだったぞ?電話もしねーで、晩飯までに帰ってこねぇって」
尻餅をついた俺に、弟は手を差し出して来た。迷わず俺は、それを握り返す。
父に似た、大きめの肉厚な掌。年下のくせに、力強さを感じ、少しだけ悔しい。
「で、お前迎えに来たのか?」
「父ちゃんのエロビ返しに来たついで。母ちゃんは、ハーゲンダッツで手打つって」
「……そっか」
家から学校は、徒歩20分。
遠い距離じゃないが、途中小さな山と薄暗いトンネルがあるから、少し、夜通るには怖い道程だった。
弟の掌に頼りがいを感じつつ気恥ずかしく思い、件のトンネルに差し掛かった。
車道専用トンネルから、すれ違い様救急車が市街地に向け走って行くのを目だけで見送る。
弟はいつしか無言になっていた。
「……なぁ、珍しくお前静かだな」
「そう?」
薄明かりに照らされた弟の顔は、表情まではわからないが、少し寂しそうな笑みを浮かべているように見えた。
「兄貴って、年上のくせに本当手がかかるよな」
「うるさいな」
「俺がいなくなったら、誰が面倒見るんだろうな」
距離として200メートル程度のトンネルを抜けると、車道側にパトカーが停まっていた。
少ないが、人だかりが見える。
国道と狭い市道を繋ぐ交差点は、自転車の飛び出しと自動車がよくぶつかる所だった。
「事故か?」
呟いた俺は、ふと掌の繋いだ感触が消えていることに気付いた。
掌だけじゃなく、弟の姿がない。
つい、さっきまで目の前に見えた背中が、存在その物が消えていた。
「タカシ……?」
驚いて立ちすくむ俺に、人だかりの中から、よく知った俺を呼ぶ声が聞こえた。
***
「まったく、あたしとの約束も父ちゃんの頼みも無視して、あんたを迎えに行くことばっかり守るんだから」
白い布を被せられた弟を前に、母が苦笑した。俺も、力無く笑い返す。
これが現実なんだと思いながら、俺は掌を見つめた。
数時間前にしっかり感じた、掌の感触を思い出す。
しっとり汗ばんでた大好きな、掌。
力強く握ってくれた、あの手は、今はすっかり冷たくなっていた。
それから二度と、俺は他人と手を繋ぐ事を止めた。
この時期になると思い出す、そんな話。
--------------------------
死ネタというのは、読者を選ぶし書き手も敬遠するんですが。
私も本当は安易な死ネタは避けたいと思っています。
それとは別に、少し不思議な、エニグマスレ的な不可解ながらも心温まる内容にBLを絡めた話、というのに挑戦してみたかったんです。
短い文章の中で、情報を極力削って展開するのが難しいと毎回痛感させられます。
にほんブログ村
好きな系統は、
【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。