オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
ただ単に、思い付いたそれは、可愛い悪戯…のはずだった。
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「玄関の電気もつけないで、どうした」
夕方、帰宅した賢が目にしたのは、怠そうにダイニングテーブルに凭れる祐司の姿だった。
薄暗い中でも、血色の悪さがわかる。
「祐司!」
「あ……おかえり。悪い、なんかさ今日ずっと気持ち悪くってさー」
言う傍らから、立ち上がりシンクに向かう祐司の背中に、賢は険しい顔を見せた。
「……まさか、悪阻か」
「は?」
大真面目な顔で、自分を見つめる賢に、祐司は間抜けな声を上げた。
「そんなわけ、ねー……」
「知らないのか、男も妊娠する可能性はゼロじゃない」
「え……うそ」
「一説によれば、108回のセックスにより、精子の生命力が強化され、胎内着床率が上がるらしい。そして、奇跡が起こる」
真顔で詰め寄る賢の勢いに、祐司はシンクに背中を預け戸惑った。
実は先手を打って、悪阻かも、と洒落を言いだそうと思っていたのは祐司の方だった。
それが、倍以上の勢いと真実味のある言葉が、賢の口から紡がれる。
対する祐司が口に出来たのは、間抜けな問いかけだった。
「俺ら、そんなに…やった?」
「数えてないからな、俺も正確にはわからない」
「だ、だって、毎回ちゃんと俺……!」
慌て出す祐司が、恥ずかしげもなく後処理をいかにしっかりやっているかと言い出した辺りで、賢は盛大に吹き出した。
「本当かどうか、今日から108回目指して頑張ってみるか?」
「て、テメ、騙したな!」
「大方、お前のことだ。食い意地張って、昨日捨てろと言った姉からもらっていた、消費期限の切れた生八ツ橋でも食ったんだろう」
「く、食ってねーよ! 味見! 本当に傷んでるか、味見しただけだ!」
先月の終わりにまた甥を預けて、賢の姉夫婦は二泊三日の京都旅行に出掛けた。
その土産が、生八ツ橋だった。
冷蔵庫にしまったはいいが、すっかり祐司はその存在を忘れてていたのだ…昨日の夜まで。
「食あたりも、見過ごせない場合もあるからな。明日病院に行けよ」
「はーい。な、てかさ、さっきの話マジ嘘?」
「妊娠の話か」
「別にしたくはないけどさー、りゅーちゃん見てるとやっぱ、いたらいいのかなぁと」
肩に頭を乗せて来た祐司に、賢は苦笑ともつかない笑みを浮かべた。
「お前の面倒を見るだけで、俺の今の許容量は一杯だ。……ただ、いずれな」
「だな」
その夜、賢は久しぶりにキッチンに立った。
愛しい妻の傷んだ胃に優しい、お粥を作るために。
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これを発表したら、コメントに「私も同じ嘘ついたことが…」と書かれていて、ヒィ!と…。男の人にそんな事言ったら、らめぇ!
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【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。