オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
広げた新聞がさっぱり、眼にも頭にも入らない。
帰宅から1時間。祐司がキッチンに向かう背中を、新聞越しに賢は見つめていた。
「……あっ、指切った」
ガタン、と椅子を蹴倒し、迷わず祐司に駆け寄る。
「大丈夫か!」
「ん……大袈裟だよ、お前」
「お前がうっかり過ぎるんだ、もういい替われ。向こうで怪我、手当してこい」
「えーっ、俺の仕事取るなよ!」
「黙れ馬鹿、こっちは労働してきて腹が減ってるんだ。お前の独創料理より、腹に溜まるモンを食わせろ」
握っていた包丁を奪い返し、賢はまな板に視線を落とした。
ふぞろいなキャベツの千切り…なのだろうか。
そして、パン粉の薄い玉子まみれの肉が、揚げられるのを待っている。
賢はそれに、苦笑を漏らしながらも、手際よく彼が作りたかったろう料理に取り掛かった。
***
「……なんでトンカツだって、わかったんだよ」
「見たらわかる。……というか、お前それ以外まだ作れないだろう」
「う……」
絆創膏で巻いた指を撫でながら、祐司は悔しげに唇を噛み締めた。
食卓には、ふぞろいなキャベツと綺麗な細切りのキャベツの上に乗った、さっくりトンカツが並んでいた。
「きょ、今日こそはお前にちゃんと、夕飯出してあげようって思ってたんだからな!」
「わかってる」
「明日は失敗しないからな!」
「……あぁ」
賢は淡く微笑むと、むくれた祐司の頭を撫でた。
「冷める前に食べないか?」
「食う!」
上機嫌で頷いた祐司を促し、自分も席に着く。
自分で揚げたトンカツを摘みながら、賢は内心胃が重くなるのを感じていた。
(明日も……か)
新婚生活が始まって、4日。
トンカツを出す、という祐司の希望は未だ叶っていない。
初日はステーキ用の牛肉を用意し、それを食べた。
翌日は、豚は豚でもバラ肉だった。それは炒めて食べた。
昨日は、ブロックで肉が置いてあった。
「絶対、料理する俺でお前ときめかせるからな」
「長い目で、期待している」
いつになるやら。
コレステロールが心配だな、と賢は幸せな苦労に、苦笑した。
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賢の言動は、夢と理想入れてます(笑)
こんな旦那だったら、結婚夢見てもいいなぁと、同士が増えたらシメたもんです。
それ以上に、こんなうっかりな嫁も欲しい。
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好きな系統は、
【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。