オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
「ハイ! 花嶋くん! お願いがございましてソウロウ」
「……んだよ」
今日はツイてねぇな。
珍しくゲーセンで、大量に小銭消費した。
あと百円しか残ってね。
そんな帰る気満々な俺の腕を掴み、香野は困った顔で見上げてきやがった。
「あ?」
「あの、花嶋くん器用だから、アレ取るアドバイス欲しいんです」
香野に引っ張られ、連れてかれた先には一台のUFOキャッチャー。
そして香野は、その中の奥にある、可愛くねぇぬいぐるみを指差した。
角度的に狙いづれぇ、面倒臭いモンを。
不器用なクセに、高度な真似してんじゃねぇよ。
「ふざけんな、お前にはそっちのキーホルダーので十分だ。帰んぞ」
「……うん、でもあと一回だけ、ダメ?」
いつもなら、素直に後ついてくる香野が、珍しく反抗的だ。
この馬鹿、後で痛い目見るって学習能力ねぇのかよ。
「ちっ、一回だけだぞ」
「うん!」
台の周りを覗き何を考えたんだか、、香野は深呼吸をして小銭を取り出した。
「あ……」
「残念だったな、金ねぇなら終了だ。行くぞ」
五十円玉しかない掌を見つめ、香野はくしゃりと顔を歪めた。
一重で黒目ばっかがデカイ眼に、みるみる涙が滲んでくる。
それは初めて見る、泣き方だった。
静かに、落ちる涙を拭って、肩を震わせる。
さすがの俺も、かける声が出ないくらい、似合わない哀しい泣き顔だった。
「おい、香野」
「きょ、おれ、たんじょび、だったから、じぶっに、ごほーび、だったのにっ。ダメ、だね、おれっ」
……ちょっと待て。なんだそれ。
「お前、誕生日だったのか?」
「ん……うんっ」
「一言も言わなかったじゃねーかよ!」
「だて、はなしまく、そーいうの、ウザイって」
「っち!」
俺は残っていた百円を出し、投入口に乱暴に突っ込んだ。
「……花嶋くん?」
「言え。一回で取って下さい、お願いしますって」
「ぅえ? あ、あの」
「早く言え!」
「い、一回で取って下さい、お願いしますっ」
「上等だ」
特徴の無い顔が、一瞬だけ愛らしいものに見え。
俺は視線と指先に、全神経を集中させた。
どう見ても可愛くない、不細工なぬいぐるみを、嬉しそうに抱いて歩く。
時たま、無性に見たくなる。
こいつが、喜ぶ顔。
ちっとは俺も喜ばすこと言えってんだ、馬鹿。
……おねだり、躾ねぇとな。
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立場と関係が微妙なお陰で、上手くいかない。
しかし安い誕生日プレゼントだ…香野ったら。
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【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。