オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
レンタルビデオ屋で、馬鹿が熱心に眺めるパッケージがあったんで、取り上げる。
「ちょ、花嶋君ひどいっ」
「あー? 『名犬ジョリイ』?」
「なんか昔、BSで見た気がしたであります」
「俺は記憶にねーな」
「……あれ? じゃ、ウチの地方だけかな」
同じ都内で、なんだそりゃ。
アニメなんて第一、俺が見てると思ってんのかコイツ。
「つーかもう決めろよ、帰んぞ」
「ハイッ」
結局香野はそれを棚に戻し、『スプーンおばさん』を抱えて来た。またアニメだ。
こいつオタクなのか?
……そういや、あんまこいつの趣味知らねーな。
店を出たら、憎たらしいぐらい激しい夕立だった。
「あちゃー」
「傘ねーし、走るぞ」
ビデオ屋から俺の部屋まで、約10分。濡れるのはムカつくが、我慢出来ない距離じゃねぇ。
「あいや待たれい、花嶋殿!」
「なんだよ」
「じゃじゃーん、用意バンタン? 折り畳み傘~、みたいな」
「減点だ、準備万端か用意周到だろ」
「そっ、そこは流すでござる!」
香野はバッグから、無地の黄色い傘を取り出して広げた。
「あぁ、俺が差してお前濡れて帰るんだな。よくわかった」
「えっ! あ、そか。花嶋君がそういうなら、はいどうぞ」
一瞬虚をつかれた顔したくせに、香野は俺の言うことに素直に従って傘を渡して来た。
……お前、どう見たってこりゃ俺が悪者だろが。
「冗談だ馬鹿、てめぇで使えよ自分のだろ」
「えぇっ、そんな! ……じゃ、やっぱりアレだよね」
「あ?」
『ふったりで仲良く半分こ~♪』
調子っぱずれな歌を口ずさむ香野が、上機嫌で傘を差す。
身長差考えねぇ馬鹿は、俺に傘傾け過ぎて殆ど雨避けてねーし。
何が半分こだっつーの、本当に…店こいつは。
俺は仕方なく香野から傘を奪い取り、馬鹿の肩に腕を回した。
……一応、周りに人がいねぇことを確認する。が、この雨でみんな傘に隠れて、周りなんて見てやしねぇ。
早歩きだった歩調を、少し緩め、俺も珍しく上機嫌で雨の中を歩いた。
たまには、こーいうのも悪くねーな。
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雨の日の一場面。
名犬ジ●リイのをご存知の方がいるのかどうか、かなり不安な年寄り。
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好きな系統は、
【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。