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オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。

2024年11月15日 (Fri)
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2009年07月08日 (Wed)

 その2。 傾向:主従 / 切ない / 片恋 / 夢

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 あの夜のことは、夢だったんだ。
 案の定、乙貴様は前の晩の出来事も自分で言った言葉も忘れてた。
 けれど、よっぽど僕が死にそうな顔をしていたのか、お咎めはなかった。
 珍しく、困惑気味に、ぎこちないながらも、僕を慰めてくれた。

『朝からそんな、この世の終わりみたいな顔を見せるな。気が滅入る』

 よっぽど、僕は酷い顔をしていたんだと思う。
 そのせいなのか、どうか。
 あれから3日。
 僕は、ご主人様から夜の呼び出しを受けていなかった。

 ***

「もう、僕は要らないのかな」

 裏庭の隅で膝を抱え、僕は思わず呟いた。
 行き倒れかけていた僕を、犬猫を拾うみたいに、拾ったご主人様。
 家事も料理も満足に出来ない僕に、一つくらい役立つ仕事を与えると言って始まった、夜のご奉仕。
 いつも一方的で、ご主人様優位で、僕がどんなに悲鳴を上げようと喚こうと、全然構うことをしなかった。
 日中は日中で、虫けらを見る目で、僕を遠ざけて。
 ……あんなの、やっぱりご主人様じゃない。まやかしだ。
 僕に優しい事を言うなんて。抱きしめられて、朝まで一緒に眠るなんて。
 可哀相な僕に、神様がささやかなご褒美をくれただけだ。

「…贅沢過ぎるよね」

 そんな夢が、毎日続けばいいなんて。

「史乃! ここにいたのか! 何をして……っ!」

 いけない、見つかった。
 叱られると思い立ち上がった僕を見て、ご主人様がはっと息を飲んだのがわかった。

「また、そんな顔をしている」

 ご主人様は先程まで振り撒いていた怒りを抑えて、僕の側に近付いて来た。
 びくりと身を竦める僕に、乙貴様は眉根を寄せて。
 僕に伸ばしかけた手を、ご自分の脇で拳にして握りしめた。

「仕事に戻れ、史乃」
「はい」

 目も合わさずに言い捨てるご主人様を見上げ、僕は胸がどうしようもなく痛むのを感じていた。
 なんで僕は、この人が好きなんだろう。

「……失礼、します」

 頭を下げて、走り出そうとした僕の手首を、ご主人様が突然掴んだ。
 立ち止まった僕が、振り返る間もなく、背中から抱きしめられた。

「今夜、部屋に来い」
「……はい」
「それと、そんな顔をするな。――私を、惑わせるな」

 それは僕の台詞だよ、と言いかけて、僕はそれを飲み込んだ。
 久しぶりに感じた、ご主人様の温もりが。僕から言葉を奪ってしまったようだった。



-------------------------------

 すごくノープランに書き出した話だったのですが、どうしても最後の乙貴様のセリフを入れたかった。

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