オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
「王様~早く命令しなさいよ!」
赤く印がついた割り箸を手に固まってる馬鹿を横目に、俺は残っていたビールを飲み干した。
帰り際、頼み込まれて無理矢理参加させられた、合コン。
参加する気が全然ねぇから、断る口実で「香野も一緒な」っつったら、誘った方も香野も、OKだと。
で、適当に盛り上がった頃、一人でチビチビ飲んでた馬鹿は今、最大の注目を浴びて固まっていた。
「えー……と、えーと、じゃ、3番が5番の人に、ちゅ、ちゅーを!」
3番、て俺だ。向かい側で手を挙げた5番は、派手な巻き髪の女だった。
「おい、王様。チューはどこにしてもいいのか」
俺が当たったのを知って、香野が分かりやすく焦ってやがる。
女の方は乗り気で、どこでもどうぞ、と纏わり付いてきた。
「え……と」
「早くぅ、ね? 王様命令だし」
「そうだよな、王様命令だしな」
女の腰を捕らえ、密着して見つめ合う。
周りが囃し立てて、騒ぎ立てる中、王様の声が響いた。
「やっ、やっぱり中止! 駄目です、しちゃ駄目です!」
「はぁ?」
シラけた顔になった女を振り払い、俺は香野の前に膝まづいた。
「なぁ王様、このまんまじゃみんなが面白くねぇだろ?なんか俺に、命令ないか?」
見上げた顔が、くしゃっと歪む。
キュッと握った拳を、俺の肩に乗せて、香野は周りに掻き消されそうな声で呟いた。
「も、帰りたい…です」
「それはつまり、俺が王様をお持ち帰りしろって命令か?」
俺の声に、周り…つうか女達が余計に騒ぎ出す。
俺はそれに構わず、頷いた香野に従い、肩に手を回し、テーブルに向き直った。
「悪いな、王様の命令だ。拝命しねぇと」
***
温い風が吹く中、馬鹿と並んで歩く。しばらく無言で俯いてた香野が、舌足らずな口調で問い掛けて来た。
「花嶋君は、いつもあーいう事してたですか」
「あ?」
「おーさまゲームで、知らない女の子と、ちゅーとか」
「場合によっちゃ」
「や……やだって、もう止めてって言ったら、だめですか?」
立ち止まった馬鹿が、泣き出す寸前みてぇな顔で俺をじっと見つめる。
たまんねぇ。こいつが見せる、わかりやすい独占欲が。
滅多に見せない、必死な顔が俺を満足させる。
「王様の命令だし、従ってやる」
「ほんと?」
「おまえの命令だしな」
お前にはどう逆立ちしたって、敵わねぇんだ。
俺の王様は、お前だ。
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諦念してきたとしか思えません、花嶋。
わがまま言われて嬉しいと思うのは、男の甲斐性の一つなんですかね。
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【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。