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オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。

2024年11月15日 (Fri)
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2009年07月09日 (Thu)

 一旦流れ完結編。 傾向:主従 / 切ない / 片恋 / 夢

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 部屋に入ると、乙貴様はベッドの上で、グラスを傾けていた。
 サイドテーブルの上には、ウィスキーの瓶。
 酔いとは遠い顔で、僕を睨み据える。

「何をしている、早くベッドに上がれ」
「……はい」

 ――史乃は何もしなくていいんだ、私が史乃を可愛がりたいんだから

 あの日聞いた台詞が蘇り、僕は寝間着の裾を両脇握りしめた。
 今日は、あの夜とは違う意味でご主人様は悪酔い気味みたいだ。
 機嫌がすこぶる悪そうで、苛々している。
 ベッドに近づいた僕は腕を掴み、乱暴に引き倒された。

「史乃」

 覆いかぶさると、乙貴様は僕の背中が折れそうな程締め付けて、耳元でそっと息を吐き出した。

「……私はあの日、幸せな夢を見ていた」
「え?」
「史乃を愛おしむ夢だった。史乃は私に笑い返し、一緒に朝を迎えると約束してくれた」

 ……あぁ、そうだよ。僕だって幸せな『夢』だったと思ってる。
 あなたもやっぱり、夢にしたいんだね。

「夢だと、思っていた。朝、本当に史乃が腕の中にいた時は、正直驚いたものだ。――それ以上にお前の表情に驚いたがな」
「ご主人様が、驚く? どうして、ですか」
「あんな、絶望の極みみたいな顔をされたら驚く。それと同時に、夢は夢でしかないのだと落胆した」

 乙貴様は少し力を緩め、眼を合わせる様に僕を覗き込んで来た。
 目許が、ほんのり紅いのは、お酒のせい?
 なんでそんな、切ない顔してるんだよ。

「……お前をただの使用人だと、無理に自分を納得させていたんだ。甘言を吐いたところで、お前に幸せを確約出来るわけじゃない。触れ合えるだけでいいと、我慢していたんだが……限界だ」
「な……何、言ってるんですか……。またどうせ、酔ってるんでしょ? 朝になったらまた、綺麗さっぱり忘れるんでしょ?」
「酔っていない」
「嘘だよ! あの夜だってそう言って……僕のこと散々喜ばせて……っ、朝忘れてた!」
「忘れていない! あぁ、ほら、また、そんな顔をする」

 乙貴様は僕の髪を撫でると、嘘だと繰り返す僕を黙らせるように口付けてきた。

「お前が使用人として、立派になるよう厳しくしている私の親心と、甘やかしたくなる男心を惑わせるな……史乃」
「止めて、酔っ払い!」
「酔っているかどうか、朝まで隣にいて確かめろ。主人の言葉を信用しない、聞き分けがない使用人には、たっぷり時間をかけて教えてやる」


 翌朝、僕がその事を信用せざる得ない程幸せな寝顔のご主人様を見たのは…僕だけの秘密だ。


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 以前から一度、こういうお話を書いてみたかたんです。
 主従物で、すれ違い。大好物。思いのほか、史乃が強気で、しっかりしてて可愛かった。

 

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