拝啓、トイレの○○様。

　こんな形ので出会いたくなかった、相手。　傾向；トイレ/紙が無い

【問題】
　
　『見えない相手』

　でひとつお話を。

　昨日無理して、鯖食うんじゃなかった。
　……後悔先に立たず、そうですね！
　じゃ、ねーよ。

　散々ひりだした安堵感で、ホッと一息横を見れば、無情な茶色い筒が転がるばかりなう。
　動転して、ツイートしてる場合じゃねーし。
　いや、どっかで電車男ばりに、ツイッターが生んだ奇跡の紙リレー読んだぞ俺。
　ちょっと期待出来んじゃね？
　ググる先生並に、瞬時にキーワードから検索連想して過ごすこと、実質0.005秒。
　……無理だ、このクソ暑い公衆トイレに篭るなんて！
　死の宣告に等しい！

『あの～…』…

　突然隣の個室から、ノックと声が掛けられた。
　やべえ、ウホッか！？

『すみません、こっち紙無いんですよ～。もしティッシュでもあれば……』

　俺は無言で、仕切り板の隙間から芯を蹴り入れた。
　声バレヤバす。
　隣の奴が、超ヲタだったら俺の人生、今夜で終了。
　祭られて、リツイートされて、メクシやヤホーのニュースになる。

『あ、そっちも……。困りましたね』

　冷静な口調と、声から察するに年上リーマンか。
　リーマンなら俺を知らないかもしれない、賭けてみるか。

「はい、困ってます」
『ですよねー。あれ、なんかあなたの声……どこかで』

　ああああー！　大事な仕事だった全国放送のＣＭとか、打ち切られろ！
　毎日放送してる夕方のアニメなんか、止めてくれ！

「き、気のせいです」
『いや、なんか娘が好きな……あ、まぁいいや。しかし暑いですね』
「……はい」

　娘ぇぇー！　犯人はお前かー！

『仕方ないんで、ちょっと部下に電話します。ちょっと待って下さいね』

　罵って正直スマンかったリーマン。
　後々あんたの事は、ブログでネタにするから！

『あ、部下すぐに来ます』
「マジすか！」
『はい。こんなところでなんですが、あなたがあのＣＭの声の方なら、感謝を言いたかったんですよ』
「……へ？」

　あのＣＭ。
　感謝。
　関係者か！　ネタになんて出来るかー！

『お蔭さまで、売上好調なんですよ。ありがとうございます、娘があなたが一番人気だと言うから採用した甲斐がありました』
「い、いえ……っ」
『紙来ましたら、お先にどうぞ、人気者さん。私は後から出ますから』



　数分して紙が届いて。
　俺は恩人の名前も顔も確認せず、個室を飛び出した。
　次は、ちゃんとした格好で会いに行きます。
　臭くない、人気者な俺として。
　涙目で走った炎天下の出来事。


　・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

　去年の夏、どうしようもなく暑かった日に書いた記憶が…orz
　某大型掲示板発の恋愛話のような、そんな感じのノリを意識したんですが。
　まさに、トイレの落書き的な勢いとお話。
　tw○tterで、トイレの紙を差し入れ…という話題は大分古いネタだというのはそっとしておいて下さい(笑)



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