オリジナルBL小説置場。 ご理解のない方はUターンを。 萌え≠エロ持論で作品展開中。 短編中心、暇つぶしに読めるお話ばかりです。
「東海林くーん!」
「こっち向いてぇー!」
俺はパンダか、とタオルで隠した口の中で呟くのを、日夏は苦笑を噛み殺しながら聞いた。
「先輩、本当にモテモテですね」
「あぁ? 別に嬉しくねぇよ、あいつら俺の顔と、――お前も好物のアレだけが目当てだ」
「ちょっ、昼間からセクハラ反対!」
顔を真っ赤にして、頭から湯気を出す日夏に、嫌味でもなんでもなく、笑みが零れた。
少なくとも、あのフェンスの向こうにいる女共からは得られない反応だ。
「可愛いぜ、ヒナ」
それは、本心から思う。
日夏は頬を膨らませ、ふて腐れてしまったが、それすら可愛いと思う。
(……完全にヤバイな)
日夏は、確かに男ではあるが、東海林がひそかに求めていた「彼女」の理想に近い。
煩い事を言わず、野球の事も理解し、自分の心身をサポートしてくれる存在。
この合宿が終わった後、またただのエースとマネージャーの関係に戻るのは、正直厳しい。
「先輩? 大丈夫ですか?」
日夏の声は心地いいと、どうしてもっと早く気付かなかったのか。
自分を心配そうに見上げる日夏に、東海林はタオルを押し付けグラウンドに駆け戻った。
「日夏、元気なくない?」
「大丈夫だよ」
夕食準備を一緒に行う、同じ一年の補欠組に無理矢理笑い返し、日夏は包丁を握り直した。
合宿も明日の昼間で解散だ。
日夏の頭の中は今夜の、東海林との事でいっぱいだった。
(…結局、最後までしないのかな)
合宿期間中、毎晩東海林に奉仕はしてきたが、日夏が抱かれることは一度もなかった。
(だよね、仮の恋人って言っても、僕だしね)
最初から冷たい態度だった東海林と、キャプテン命令とは言えこんな関係になったのは、嫌だった。
本当は、東海林に憧れて入部したという不純な動機が見透かされたようで。
傍にいればいる程、東海林の魅力に惹かれて、日夏は途中からこの関係が偽りであることを忘れていた。
(…でも、先輩は僕なんか…)
自分を抱かないことが答えだと、日夏は涙が滲んだ目許を指先で拭った。
就寝時間まで、あと4時間。
東海林は窓際で外を眺めながら、最後の夜に思いを馳せていた。
***
いつものように、布団に入る。
夕食も入浴時も、東海林は口数がいつもより少ない上、どこか不機嫌そうだ。
「…先輩、今日はしない…の?」
控え目に切り出すが、東海林は暗闇の中日夏に背を向けたまま振り返らない。
ただ、時間だけが過ぎていく。二人で過ごす時間が。
「先輩……っ!」
日夏は耐え切れず、東海林の背中に抱きついた。
「離せよ、ヒナ」
「やだ! 今日で、最後なのに、こんな急に先輩遠くなるなんて、やだよ!」
振り向かない背中に額を押し当て、日夏は震える声を絞りだした。
「……今日までは、僕、恋人でしょ?」
「ったく、この馬鹿」
東海林は吐き捨て勢いよく振り返ると、泣き出しそうな日夏の頭を抱え込んだ。
「じゃあ、最後に我が儘聞けよ」
「……ん」
最後、と繰り返す度に、胸が痛くなる。
日夏が何度も頷くのに苦笑しながら、東海林は日夏の耳元に囁いた。
「お前が欲しい、抱かせろ」
「……え?」
「恋人なんだろ? いい加減我慢限界だ」
日夏が驚いて顔を上げれば、東海林は至極真面目な顔をしていた。
「俺が、こんなに我慢すんのも、大事にすんのも、お前が初めてなんだからな。……忘れんなよ」
「うん」
嬉しさに溢れた涙を、東海林は唇を寄せ丁寧に舐め取る。
日夏は腕を伸ばし、東海林の背中を抱きしめた。
これからの行為を考えると、口を利く余裕が無くなるかもしれない。
日夏はそう思い、精一杯の笑顔を作り、東海林に告げた。
「……ありがとう、先輩。僕、本当に先輩が好きだよ」
「何?」
「去年大会で見た時から、ずーっと好きでした。明日からまた、普通のマネージャーに戻ります」
東海林の唇に自分の唇を寄せた、瞬間。
背骨が折れる程の力で、日夏は掻き抱かれた。
「駄目だ、全っ然足りねぇ。今夜だけだとか、今日で終わりなんて、無理だ」
「……先輩?」
「なぁ日夏、もうこのまんま俺のモンになれ。全部俺のモンになれ。契約更新だ!」
日夏をきつく抱き、東海林はいいだろ、と何度も繰り返す。
それは、日夏が何度頷いても繰り返された。
「お前の為に甲子園に行くぞ、てか?」
「てか、じゃなくて約束する!」
素肌のまま腕に抱かれ、日夏はうっとりと眼を細めた。
今日からはまた、正式な恋人として東海林に尽くそう。
夢の甲子園目指して。
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嘘から始まる恋、も好きなネタの一つです。そして限りなく王道っぽい、俺様×健気を目指して玉砕した感が拭えません。
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好きな系統は、
【俺様×健気】【ヘタレ×女王様】
萌え≠エロが持論です。でも、本番≠エロだし、下ネタはOKなんで、オカズになるようなエロは書けないということだけご了承ください。